第三話 異変
家に帰って手を洗い、うがいをしてから買ってきたものを冷蔵庫にしまいます。
りんごは皮を剥いてウサギさんにします。耳の部分がちょっと欠けちゃったけど、赤くて可愛いウサギさんの出来上がり。
僕はそれを持って仏壇に行きます。
「じいちゃん、ばあちゃん、かあさん。仲良く食べてね。」
仏壇には三人の写真が並びます。母さんは僕が5歳の時に飛行機事故で亡くなりました。CAさんだった母さんは飛行機の墜落事故で帰らぬ人になってしまいました。
当時の僕はそれはそれは泣いて。当時暮らしていたマンション中に響く位泣いていたそうです。母さんが死んでしまった後の処理や、マスコミからの父さんへのインタビューなどなどあって父さん自体も疲れてしまっていたそうです。
そんな時僕は泣き通しだったので、心配してくれたじいちゃんとばあちゃんが、今住んでいる家。母さんの実家に引っ越してこないかと言ってくれたようです。
引っ越してからは、じいちゃんもばあちゃんも優しくてメソメソしてた僕はすっかり立ち直りました。
母さんの事を思い出すと今でも寂しいし、悲しくなるけどもう大丈夫。
そんな僕と父さんをさせてくれたじいちゃんは3年前に、ばあちゃんは去年亡くなりました。二人ともガンで亡くなりました。でも二人とも笑って最後を迎えることが出来て幸せだったと言ってました。
「母さんも最後は笑ってたかな?」そう父さんに聞いたことがあります。
「墜落事故で死んだんだ。笑って最後を迎える事は出来なかっただろう。でもあの日、家を出ていくときはお前と見つめあって笑ってたな。」
「・・・うん、覚えてる。行ってらっしゃいって言ったの。」
「職業柄仕方ないと言ったらそれまでなんだが、だけどそれだけCAっていう仕事が好きだったからな。許してやってくれ。」
そう父さんはいってました。もちろん母さんを恨んだことなどありません。誇りに思っています。
さて、晩御飯の用意をしないと。父さんが帰ってきてしまいます。
父さんは引っ越す前までサラリーマンとして働いていましたが、引っ越しを機にじいちゃんと同じ大工さんになりました。
親一人子一人で今も仲良く暮らしています。
「今日は生姜焼きにしよう。うん、そうしよう。」
お風呂を洗いながら今日の献立を決め、晩御飯に取り掛かろうと思います。
茜色だった空は東の方から次第に暗くなってきました。
いつもとは反対向きの風が窓から入ってくる。
僕は縁側の雨戸と窓を全部閉めた。
「雨が降りそうな匂いがするなぁ。困った、父さん自転車なのに。」
かつて首都と呼ばれた場所 pipittapan @pipittapan
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