第二話 変化
クラスメイトに話を通し、相棒にしばしの別れを告げた時には始業時間ギリギリだった。
学校は平和だ。ぬるい授業と部活、そして誰かのロマンスがここにはある。
「ねぇ聞いた?二組のマキちゃん!昨日駅で三年の笠井先輩と歩いてたんだって!」
「えー!笠井先輩ってめちゃイケメンのサッカー部の?いいなぁー!」
僕だって彼女が欲しいと思った事もありますが、女の子と他愛もない話をする事が出来ないのです。
彼女達が話す浮世話が僕にとっての青春なのです。
女の子しゃべらないのではないのです。僕には話題がないというか、あんまり話をする事自体も得意じゃないのです。
家で本を読むか、YouTubeを見る事が僕の趣味。
父さんがたまにツーリングに連れてってくれるけど、父さんと行くと最終的には置いていかれちゃうことばかり。父さんやその仲間のバイクは大きくて速い。
僕のバイクだと敵わないのです。
そんな平凡のちょっと下くらいの位置にいるのが僕なのです。
そう僕、木嶌健人(キシマケント)皆からはキシケンって呼ばれます。
そんなキシケンは終業のホームルームが始まるのを今か今かと待っています。
教室に差し込む太陽は、心地よくて眠りを誘います。あたたかな光、学友たちの楽しそうな声はいつもと変わらぬ、しかしこれを人々は幸せと呼ぶのでしょう。
僕もそう感じます。そんな時、担任の先生が教室の扉を開けます。さああとはホームルームだけです。
帰りは帰りとてクラスメイトにお礼を言って相棒を迎えに行く。
『おい、バッテリーが無いぞ。さっさと充電しろ』
はいはい、相棒。わかってますよ。丁度バイクで来たんだから、帰りに充電して帰りましょうね。
そうだ、スーパーに寄って買い物しなきゃ。牛乳が無いんだった。充電時間の暇つぶしになりますね。
スーパーの横にある充電スタンドで相棒には電気を入れてもらっている間に買い物。
急いで出てきたもんだから今日は買い物袋を持っていない。なので大量には買えそうもありません。
そして僕の相棒には収納スペースがないので、学校のカバンに入る分だけしか買えません。
牛乳と卵、あとー・・・リンゴ。
一通り買い物を済ませ、相棒の元に戻れば相棒も元気いっぱい。
スタンドのおじさんにお金を払って帰りましょう。
夕日に向かって相棒と共に走り出す。眩しくて運転しずらいですが、茜色に染まりつつある空はとても綺麗で、季節の移ろいを感じさせます。
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