　パン！　パン！　と空高く花火が打ち上がる。

　式典の始まりである。

「まずは今話題沸騰中の魔界イケメンおネエ歌手、ティファニーさんによるミニライブです！」

　司会の声を遮るように会場中からキャー！　という叫び声にも似た歓声が巻き起こる。

「ティファニー様！」「本物、本物ヨォ！」「はぁ、尊い、尊いわぁ！」

　道化師のメイクを落としたティファニーは、それはそれはイケメン（だけど心は乙女）で、あれよあれよという間に、人間界でも大人気のアイドルになってしまった。今回の式典の最初に登場するとなって、会場には大勢のファンが詰め掛けたのだった。もちろんその中には、僧侶ハンナもいた。お手製のうちわを持ち、目をハートにしてティファニーの歌に酔いしれていた。

「人間と魔族、みんなで仲良く愛を育んじゃうわよォ！」

　キャー！　ファンたちが大興奮の中、ハンナは一人優越感に浸っていた。

（みんなはティファニー様の過去を知らないのよ。知っているのは私だけ！　ああ、ティファニー様、大好きぃ！）

　会場が一体となったところで、いよいよ式典は演舞に入る。