第57話 勇者と魔王がふたりきり その3

 マオとユウの両手はしっかりと握られたまま。逃げることも、話題を逸らすこともできない。マオは一応、自分の言いたいことを言えたので、心に少し余裕ができた。

 思わず「てっきり」と発言してしまったユウは、なんと返事をしたらいいものか、頭の中が高速に回転していた。


「ねえ、ユウちゃん。教えて。てっきり、何?」


(どうしよどうしよ、ええいっ! もうどうにでもなれぇ!)

 ユウは覚悟を決めた。

「てっきり、私の方が(キスしようとしたのを気づかれて)嫌われたんじゃないかなって思ってたからさ……ほっとしたの」


「嫌う……私が……ユウちゃんを?」


 はっ! 先日の温泉で見てしまったあの光景(ユウとハンナが裸でじゃれ合っていた)のことか! あの時の様子が鮮明に思い出されて、マオは顔を赤らめてしまった。落ち着くのよ、落ち着くのよ私。あのときは動揺したけど、もう乗り越えたでしょ!


 ここから二人の話は誤解したまま進んでいくこととなる。

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