第51話 大魔王降臨 その1

「……こ、ここは?」

 目を覚ました戦士アッシュが、見慣れない景色に戸惑う。


 所狭しと並べられたトレーニングマシンの数々。そのどれもが使い込まれたものだったが、丁寧にメンテナンスされていて、「俺を使って鍛えてくれ!」と言わんばかりだった。そして、装備していたはずの鎧や兜はロッカーに丁寧に納められていて、なぜか短パンにタンクトップ一枚という身なりだった。


「おっ、目が覚めたか」


 マクベスがアッシュが起きたことに気づき、近寄ってきた。彼もまた、タンクトップに短パンという出で立ちだった。


「おお、マクベスじゃないか!」


 脳みそまで筋肉の二人は、人を顔で覚えるのではなく筋肉の形状で記憶しているので、服や鎧を着ている状態では誰が誰なのか分からないのだ。ティファニーの魔法によって魔王城のトレーニングルームに飛ばされ、タンクトップに短パン姿となって初めて、お互いが温泉で出会った筋肉ともであることに気づいたのだった。


「まさかアッシュが勇者一行の戦士だったとは気づかなかったよ」

「俺もだ。まさかマクベスが魔王の側近だったなんて」


 昨日の敵は今日の筋肉とも。ここは争いのない世界トレーニングルーム

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