第35話 勇者と魔王と温泉と その4

 「だーっはっはっは! 魔族にこんないい筋肉の男がいるなんて! 今度一緒にトレーニングしようぜ!」

「喜んで! しかしあんたもなかなかだ! 人間でこんなに筋肉がついている男初めて見たぞ!」


 いつの間にか恋話が筋肉談義になって、戦士アッシュと巨人族マクベスはすっかり打ち解けていた。ティファニーはマクベスが魔族とバレてしまったときのことを危惧していたが、それも杞憂に終わった。


(ただ……二人とも既に二回会っているということに気付いていないのね……まさに脳筋とはこのことだわ)


「アーッシュ! そろそろ上がるからね!」


 岩の向こうから僧侶ハンナの声が聞こえてきた。

「おっ、呼ばれた。じゃあ、また筋肉ともよ!」

「ああ、またな筋肉とも!」

 アッシュはマクベスとティファニーに別れを告げ、満足そうな表情で男湯を後にした。

 

 着替えを終え、ハンナとユウと合流してから、ふと気付いてしまったのだ。


――ユウちゃんはあなたのこと待ってるかもしれないわよ?


「ん? 俺はユウ様の名前を出したっけ? なんであの人、名前を知ってたんだ?」

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