第34話 勇者と魔王と温泉と その3

 戦士アッシュは目の前にいる細マッチョが、魔王の側近、道化師のティファニーであることに当然気付いていない。魔王城では道化師の格好をしてメイクまで施しているから気付けという方が無理かもしれない。

 一方で、ティファニーはアッシュのことを勇者と一緒に来ていた戦士、とちゃんと認識していた。

 

 二人は恋について熱く語り合っている。



「言っちゃいなよぉ! ユウちゃんはあなたのこと待ってるかもしれないわよ?」

「えっ、そ……そうかなぁ?」


「そうよ、だって一緒に暮らしているんでしょ? それはもう心を許してるって……このこの!」


 ツンツンと肘でアッシュの大胸筋をつっつくティファニー。


 体は男、心は乙女。恋の伝道師ティファニーは、誰の恋路も邪魔するわけでなく、ただ純粋な心で応援しているだけなのである。マオとユウの恋を成就させようとか、マオのための障害を取り除いてあげようとか、そんな無粋なことはしないのである。


「ちょっとその話面白いな、俺もまぜてくれ」

 なんとマクベスまでもがアッシュの恋話に参戦してきた。

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