第33話 勇者と魔王と温泉と その2

「いやぁ、やっぱり温泉は気持ちがいいわね!」

「そうだな、しかしマオ様一人で大丈夫だろうか?」

「大丈夫よ……あの子ももう大人なんだから」


 霧の向こうの二人はそんな会話をしながら湯に浸かっていた。



 ――おっ、向こうも男女で温泉にやってきたんだな。俺たちと一緒か。しかし、今入ってきたのは、二人とも……男だよな? どこかで聞いたことあるような声だが……喋り方にも特徴が……どこで聞いたっけ?


 しばらく考えたが思い出せなかったので、アッシュはユウのことに思いを馳せた。


 ユウ様。初めてお会いしたのは自分が騎士団に入ったとき……あのころは可愛いお姫様っていう感じだった。今では勇者となり魔王と戦っているけど、時折見せる可愛らしい表情は昔と変わらないんだよな。ああ、護衛に選んでもらえて本当に良かった! 魔王を倒したら絶対にユウ様に告白するんだ……っていいのか? ただの兵士と一国の姫……お付き合いとかできるものなのか?



「はあ、恋って障害がいっぱいだなぁ」

「あら、恋の悩みかしら? 聞いてあげるわよ!」


 いつの間にかアッシュの目の前に、濡れた長髪がセクシーな細マッチョイケメンが立っていた。

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