第32話 勇者と魔王と温泉と その1
人間と魔族のちょうど国境付近。
常人は入ることすらためらう霧の立ち込める森の奥深くに、自然にできた露天風呂がある。辿り着けた者のみがその恩恵に預かれるこの温泉の効能は凄まじいものがあり、入るだけであらゆる病気や状態異常が回復するという。
かつての勇者や魔王も戦いの傷や状態異常を癒しに訪れたと記録に残っている。
「ま、そうなるわな」
勇者ユウの護衛、戦士アッシュは一人で温泉に浸かっていた。
温泉の中心に立っている巨大な岩が、自然と男湯と女湯を隔てる壁の役割をしているのだ。「のぞいたらダメだからね!」と僧侶ハンナが言っていたが、こんなに霧の濃い中である。見ようとしても二人のシルエットすら見えない。
ときおりキャッキャというユウとハンナのはしゃいだ声が聞こえるが、そんなのどうでもよかった。
「おっ、先客がいたのか。失礼する」
アッシュが一人でくつろいでいると、そんな声とともに誰かが露天風呂にやってくる音がした。霧が濃くてよくわからないが、どうやら男性二人のようだった。
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