第29話 魔王の憂鬱 その1

 こちらは魔王城。


 瞬間移動魔法テレポートで帰ってきたマオをティファニーが笑顔で出迎えるが、彼女の様子がおかしいことにすぐに気づき、慌てて近寄る。


「どうしたの、マオちゃん!」


「えへへ、いい匂い……」

 マオは頭に生えている二本のツノから蒸気をピーッと吹き出しながら、幸せそうな顔でおほとのごもった眠りについた


「もう、最近のマオちゃんは歩く加湿器じゃない!」

 なんかもういろいろと事情を察したティファニーは、そう言いながらもどこか嬉しそうに、マオを抱えて彼女の寝室へと運んだ。


 しばらくして、マオの私室から出てきたティファニーに、もう一人の魔王の側近、巨人族のマクベスが眉間にシワを寄せながら声をかけてきた。


「最近のマオ様はどうしたというのだ。あの勇者とやらがやってきてから、なんか調子が悪そうに思えるが……ティファニーは何か知っているのか?」

「あら……あなたは気付いていないの? そんなのでマオ様の側近がつとまるのかしら?」

 ふふっ、とわざと意味深なセリフをはいて、ティファニーはその場から立ち去った。


「……なんだと?」

 まさか、まさかマオ様が病気に……? はっ、勇者たちが病原体ウイルスを持ち込んだというのか!

 マクベスは何もわかっていなかった。

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