第10話 勇者と魔王、再び その3

 勇者ユウと魔王マオの戦いは続いている。女神の寵愛を受けしユウと魔神の加護を受けしマオは、当然ながらお互いダメージを受けることはない。っていうか、本気で戦っていない。本気で戦うわけがない。


「やるじゃないか、ユウ!」

「あなたもね! えっと……」


 二人は戦うフリをしながら、いかにして近づき、お互いの顔をできるだけ近くで見ることができるかだけを考えていたのだ。しかしはたから見れば、壮絶な戦いが繰り広げられているようにしか見えなかった。


「マオだ」魔王マオが剣と剣がぶつかり合った瞬間、ユウの耳元でボソリと呟いた。


「!」二人は一旦距離を置く。勇者ユウはなぜかにやけていた。


「魔王……マオ……素敵な名前ね……」


 シューッ!


 マオは頬を真っ赤にして、二本の角から蒸気を吹き出した。

 ユウも鼻からつうと血を流した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る