第9話 勇者と魔王、再び その2

 魔王が前回と同じセリフを吐いた後、勇者ユウに向かって近づいてきた。

(ああっ! 魔王が私の名前を呼んでくれたっ!)

 ユウは感激のあまり恍惚の表情でその場に立っている。


「来るっ!」

 戦士のアッシュが魔王の攻撃を防ごうとユウの前に立とうとすると、


「手を出すなッ! ここは私が一対一で戦う!」


 ユウが大声を張り上げてアッシュを制した。僧侶ハンナも思わず防御補助魔法を使うことを躊躇ためらった。


(だって、アッシュが私の前に立ったら、魔王の顔が見えなくなるじゃない!)

 やはり動機は不純であった。


「さすがユウ! 正々堂々とした態度は見事であるぞ! マクベスとティファニーも手を出すなよ、ここは私一人で戦う!」

「はっ!」


(後ろの二人はマクベスとティファニーっていうのね……って違う! 私は魔王あなたの名前を知りたいのよ!)


 ユウは魔王が近づくにつれ、自分の心臓の鼓動が大きくなっていくのを感じていた。

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