第4話 勇者と魔王 その4

(魔王が私の名前を呼んでくれた……ああ、幸せ……でも、魔王の名前がわからなかった)


 勇者一行は瞬間移動呪文テレポートで、城下町にあるユウの自宅へ戻ってきた。彼女は寝室のベッドで横になり、額には氷嚢が置かれていた。


「なあ、ハンナ。魔王の攻撃に反応できたか?」


 ユウの様子を心配そうに見守りながら、戦士が僧侶――ハンナに向かって尋ねる。


「まさか。あなたはどうなの? アッシュ」


 アッシュと呼ばれた戦士もかぶりをふる。

「いや、攻撃する素振りさえも見えなかった。あいつはあまりにも強すぎる」


 そんな話をしていると、ユウが突然ベッドから起き上がって言った。


「私はもう一度、魔王に会いに行くことにする。だって、勇者だから!」


 ユウの動機がとても不純なものだということに、アッシュとハンナは気づいていなかった。

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