第5話 勇者と魔王 その5

(いなくなっちゃった……)


 魔王の間。

 嵐のようにやってきて、そして去っていった勇者一向に、一同は言葉がなかった。


「なんだったんですか、今のは」と魔王の側近の一人、巨人族のマクベスが眉をしかめた。


「なんだか面白い人間だったわね」もう一人の側近、道化師の格好をしたティファニーが笑いながら言った。


 魔王は若干うつむきながら、またきてくれないかな……勇者ユウ……今度会ったらユウちゃんって呼んでもいいかな……と妄想にふけっていた。


「……オ様、マオ様!」


「はっ!」魔王は自分の名前を呼ばれて我に返る。


「勇者に対するお言葉、流石さすがでございました。このマクベス、マオ様がここまで立派にご成長なされたことを大変嬉しく思います」


「お……おお! そうだろう! 父上から昔話をよく聞かされていたからな、セリフは全て覚えているぞ!」


 実は勇者ユウも魔王マオも小さい頃から、偶然にも同じ昔話を読み聞かせされて育ったのであった。

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