虚構1


椎菜の母親、藍蘭の実家には恨みがあった。   

それは家を燃やそうと、藍蘭の親を殺そうと生き残った藍蘭を監禁して拷問しても消えなかった。

恨みというのは、ずっとずっと残るものだ。

「ーーって話はどうでもいいよね。椎菜の出生とはそこまで関係ないから。」

いや、その話も気になるんだけど?

「……母親は藍蘭でも、父親は?」

「椎菜と藍蘭一緒に住んでいる柊っていう男だよ。あの一家はちゃんと『普通の家族』なんだ。ーー関係性が歪なだけで。」

「話が見えてこないですね……。」

首を傾げると、

「柊は藍蘭には愛情があるけど椎菜には全くないんだよ。逆に藍蘭は柊のこと嫌いだし。」

今までの長谷野ならしないようなくしゃっとしたニヤケ顔で続けた。

「というよりは無関心?」

ホームセンターで会ったときの父親は椎菜に対する態度はとても冷たいものだった。

何度も椎菜の携帯に着信を入れる母親とは正反対だ。

執着と無関心、椎菜は両極端な両親に挟まれている。

「暴力こそ振るわなかったけど、ネグレクト気味だったみいだよ。」

椎菜は父親のことをどう思っているのだろうか。

「椎菜はさ、柊に無理やりされて出来た子どもだからねーーそうするように俺が頼んだけど。」

「……。」

そこまでしてなぜ、椎菜が生まれたんだ?

「藍蘭の死後に拷問する相手ーーそれが、椎菜だよ。」

俺は一瞬冗談かと思ったが、変わらず笑う長谷野に言葉を失った。

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