明け方
薄暗い中、長谷野は帰ってきた。
外から車の音がして、部屋から飛び出た。
朝日はまだ顔を少し見せた程度だ。
「あ、おかえりなさい。」
「ただいま。あれ?朝起きるの早いね。」
あんまり椎菜と2人じゃあのベッドは寝心地よくなかった?と、軽口が叩く。
「長谷野さんに聞きたいことがあるんです。」
「……何か、とっても悩んでるって顔してるね。」
長谷野は自分の住む小屋を案内してくれた。
「暑いよね、エアコン今つけるよ。」
熱気がこもりやすいのか蒸し暑さを感じた。
質素な木の小屋には不似合いな最新のエアコンがあった。
「……。」
俺はソファーに座った。
「で、何が聞きたいの?」
「椎菜のことです、単刀直入に聞きます。椎菜の父親はあなたですか?」
長谷野はふむ、としばらく考えて
「椎菜に何か聞いたの?」
「いえ。」
「じゃ、勘?」
どう話すべきか迷ったが
「アルバムを見ました。椎菜と、椎菜の母親と、長谷野さんが写っていました。」
「あー、そっちね。」
でも、3人の写真なんてほとんどなかったと思うんだけどねーと言いながら
「椎菜と俺は親子じゃないよ。」
「そう、なんですか?」
正直聞いてみたけど、思ったよりあっさり答えてくれた。
「まあ、椎菜のこと気になってたら当然だよね。」
どう反応していいのかわからず、愛想笑いしている。
長谷野は少し考えて、
「俺は父親じゃないけど、椎菜が産まれる原因にはなったね。」
言葉の意味が分からなかった。
「椎菜のこと、全部知っても大切にしてくれる?」
「それは……。」
言い淀んだが、ここで引き下がったらダメな気がした。
「もちろん、大切にします。」
「そっか。」
長谷野はすでにわかっていたと言わんばかりに、ニヤついていた。
「じゃ、安心だーー椎菜の両親は俺が『決めた』んだ。」
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