2人きりの夕食

「いただきまーす。」

弁当を並べて手を見合わせる。

ご飯を一口食べたが、美味しくない。

正直、冷めたご飯は食欲が沸かない。

手が震える。

どうしても、昼間にあったアルバムのことが気になる。

椎菜と長谷野の関係。

椎菜のの母親らしき写真。

椎菜の母親は拷問を受けていること。

椎菜はどれくらい知っているのか、椎菜は何を考えてる?

椎奈は俺に何を望んでいる?

「甘い、な。」

「え?」

「卵焼き、市販品はやっぱり甘い。もっと旨味がほしいよ。」

「え、ああ。」

椎菜のは俺をなんのために連れてきたんだろう?

何か目的があるはず、きっと。

もう少し遠回りな言い方をしてみるか。

「なあ椎菜。」

「ん?」

「どうして俺なんだ、バイト誘ったのは?」

「単純に予定が合ったからだ、学校にも言わないでいてくれたし。」

「あ、ああ。」

「学校に言われると親にバレかねないからな、ほんとに助かった。」

「親は長谷野さんのこと知ってるの?」

「知らないよ。」

「そっか。」

椎菜は機嫌が良さそうだった。

「もしかして、思ったよりキツかったか?」

俺の様子が普段と違うことに気がついたのか、心配そうに顔を覗き込んできた。

「い、いや。思ったより重労働だからさ、疲れたのかも。」

これ以上は何も聞けない。

「でも、俺もバイト代弾まれたから嬉しいよ。」

「たしかに封筒分厚かったね。」

椎菜のこと、気になって仕方がない。

俺は、悩んだまま時間だけが経っていった。

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