第11話

帰る時間が迫って来て急いで着替えてたら笹木からメール。


海の家から見えるでかい岩場があるんだけど

そこに来て。

もうすぐ夕日が海に沈んでくから一緒に見よう。


望結に見つからないようにって奈菜が協力してくれたの。

小走りで探してるんだけど...。

岩場ってあの真正面のかな?

でもどこから下りてくの?どうやって行けばいいんだろ...。


「桃のこと、好きなんでしょ?」


えっ?さやかの声が聞こえた。

どこから?誰に聞いているの?

もしかして...。

忍び足で声が聞こえた方向へと進み、見覚えのある頭を見つけた。


「え...!?」


2人は抱き合ってた。

さやかが笹木の身体に寄り添うように。


「好きなの。小さい頃からずっと。一冴だけしか見えないの...助けて。」


うそ

なんで

だって笹木のことなんとも思ってないって。


笹木は黙ったまま何にも言わない。

あたしはこれ以上見ていられなくて踵を返して走り出した。

小石を蹴散らして。

ビーサンに挟まって痛いけど、心臓の方が痛い。


奈菜がすごくびっくりしてたけど、電車時間も迫っていたから2人の手を引きずるようにして海から逃げた。


どうやって家に帰ってきたかはあまりよく覚えていない。


潮の匂いを、笹木と一緒に海で楽しく遊んだ思い出を。

洗い流したくてまだ冷たいシャワーを頭からかぶる。


「...嘘吐き!嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き!わぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」


お風呂場で声の限り泣き叫んだ。

それこそ明日のことも考えずに。


笹木とはほぼ毎日一緒に夏休みを過ごすことになっていたことを。

忘れて。

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