第10話
やべぇ 、緊張しまくって心臓が痛すぎる。
もうすぐここに、宮本が来る。
シチュエーションはばっちり。
海に沈む夕日を眺めながら、宮本に...。
「一冴?なにしてんの?」
「なっ、なんでお前ここに居んだよ!邪魔だからあっち行ってろよ。」
突然後ろから声をかけられて本気で焦る。
なんで?
後をつけてきたのか?
だってここは、しぶから教えてもらったちょっとした岩場で、海の家からは見えない場所なのに。
「電車時間もうすぐだよ。帰れなくなるよ。」
「うっせぇな、わかってるよ。とりあえずあっち行けって。」
ヤバい。
さやかにばれたらどうしよう。
絶対ネタにされてあっという間にみんなに広がる。
「ねぇ。」
「...お前日本語わかんねえの?あっち行け。」
俯いてたさやかが顔を上げ、真っ直ぐおれを見る。
「桃のこと、好きなんでしょ?」
なにも言えなかった。
さやかの視線が
さやかの泣き出しそうな目が
おれを見ている。
「告白しようとここで待ち合わせて待ってる...そうでしょ?」
全身から汗が止まらない。
喉が渇いてひっつきそうだ。
「...お前には、関係ないだろ。」
それでもなんとか声を振り絞って、答えた。
じり
じり、じり。
さやかとおれの距離が縮まる。
さやかが腕を伸ばして、抱きついた。
「好きなの。小さい頃からずっと。一冴だけしか見えないの...、助けて。」
いきなりの告白。
女の子のやわらかい肌と海に沈む夕日。
潮風と波の音。
さやかを押し退けることもできずに棒の様に突っ立ったままこの状況を受け入れることができない。
かつん!かつん!
頭上付近から小石が落ちてくる音に我にかえった。
慌てて振り返って背伸びして斜め上を見ると、走り去ってく宮本の後ろ姿だった。
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