第6話

「ねぇ、ちょっといいかな?」


やわらかそうな宮本の毛先がおれの肩に微かに触れる。

また髪伸びたのかな。

ペンケースをバッグに放り込んで席を立つ。


「じゃあ一緒に帰るか?」


できるだけからかうようにおどけて言うけど、さっきから心臓がやばい。


「なになにー?ふたりして怪しいなー?」

「ちょっと望結!やめなって。」


佐伯が橋本の腕を掴んで引っ張ってるが、橋本はそれに動じずおれたちの仲に割り込んでくる。


「あ、ちょうどいいや。笹木みんなで帰ろう?」

「...あぁ。」

「えっ?なんでー?」

「望結のせいだよ、ごめんね桃。」

「いいよね?笹木。奈菜気にしないでよ、行こう?」

「じゃあなんか食べに行かない?」

「かき氷とかは?」

「桃に賛成ー。」


宮本の背中を見つめながら教室を出る。

ふたりきりがよかったんだけど、これはこれでいいもんだな。

女子同士の楽しげな会話を後ろから聞きながら目的の店へと。


「なににしようかなー、桃はレモン?メロン?」

「橋本、なにその二択?」

「桃はかき氷レモンかメロンしか食べないの。」


へぇ、知らなかった。


「違うよ!種類が少ない時だよっ!」

「まぁまぁ。早く決めようよ。」


橋本は抹茶みるく、佐伯は桃、宮本はレモンみるく、おれはコーラにした。


「桃のちょっとちょうだい。」

「奈菜のやつもおいしい~。」

「望結取りすぎだよー!」


宮本ってばほんとうまそうに食うな。

嬉しそうな笑顔に心があったかくなる。

スプーンで氷とシロップを混ぜながらにやける。


「ねぇ?こないだの話なんだけど、望結も奈菜も一緒に行っていい?」


突然話をふられて、理解するのに7秒かかった。


「あぁ、いいけど... 話ってそれだけ?」

「...?うん。」


橋本がやたら食いついてきたから、海に行くって話を曖昧に説明した。

佐伯はおどおどしながらおれにじゃあよろしくお願いします、なんてかしこまって言うからちょっと困った。


まずいな、まさかこうなるとは予想してなかった。

かき氷を食べながらこれからのことを考えた。

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