第281話 DC-4Eよりハリファックスの方が100倍マシとか、公爵とか”あかいあくま”とか(イタリア繋がり)
日本皇国は、イタリア攻略に向けて様々な準備を重ねていた。
例えば、ギリシャ奪還戦+アルバニア解放戦に参加した軍艦は戦艦4隻、正規空母4隻、強襲揚陸艦4隻だが、それぞれ2隻ずつ追加予定になってるし、護衛艦隊として軽空母4隻も投入される予定だ。
また、そろそろ開示して良いと思われるが……イタリア攻略戦は、久しぶりに日英同盟合同作戦となる予定だ。
シチリア島上陸はイギリス、イタリア本土上陸は日本皇国が担当することになった。
また、その下準備としてリビアの沿岸部、マルタ島の軍港・基地能力の強化を推し進め、この度、ギリシャより正確に租借を受けたクレタ島各地の基地機能の強化や更にはカラマタへの新規空軍基地や補給港の設営が急ピッチで行なわれていた。
またクレタ島のハニア、そしてリビアのトリポリ近郊の空軍基地には、いよいよ出番となりそうな四発の大型長距離重爆撃機、いわゆる”戦略爆撃機”の配備が行われ、その活躍の時を待っていた。
せっかくなので簡単なアウトラインだけ記しておこう。
中島”深山”
エンジン:火星二七型(離陸1850馬力)×4
最高速度:460㎞/h
航続距離:3,200㎞
ペイロード:6,000kg(最大)
自衛装備:毘式12.7㎜機関銃連装×3、単装×2(計8丁)
特殊装備:不活性ガス噴射装置付セルフシーリング防爆タンク、エンジン用自動消火装置、ノルデン式(タコメトリック式)爆撃照準器+、電波高度計連動慣性航法装置、各種警戒用機載小型レーダー、チャフ投下装置など
まず最初に答えを先に言っておこう。
名前以外は史実と別物だ。史実の”深山”は失敗機ダグラスDC-4Eを原型としていたが、この世界線の”深山”は純粋な「ハンドレーページ・ハリファクス」のライセンス生産機だ。
エンジンをオリジナルのブリストルではなく、三菱の”火星”に変更され、それに伴う各種の仕様変更はあるが、性能はほぼほぼハリファクスに準じていると考えて良い。
ぶっちゃけてしまうと、現在開発中の”連山”も”アブロ・ランカスター”のライセンス生産機(正確には改造型)であり、現状では戦略爆撃機のジャンルでは英国面に依存してるのが現状だ。
だが当然、日本の航空産業はそれで終わるつもりはなく、今は技術やノウハウ蓄積の雌伏の段階であり、ジェット時代に本格的な巻き返しを図ろうとしている。主に転生者が。
***
準備しているのは軍事面だけでなく、政治面でもだ。
まず、現在、リビアとトルコの収容所に合計30万人を超えるイタリア軍人の捕虜が居るという現実がある。
そして、政治部と外交部は「イタリア本国から受け取りを拒否された」この人間を何とかできないかと前々から考えていた。
正確には、リビアで大量の捕虜が発生し、受け取りを拒否された辺りから、動き出していたのだ。
「そういう訳でチャーチル、”例の人物”を引き取りたいのだが」
「良いだろう。ただし、ソマリアとエチオピアで得たイタリア人捕虜5万も一緒にだがね」
「ぐっ……致し方無い」
「仮にも”イタリア領東アフリカ帝国の副王”が、直参の配下を見捨てて自分だけ助かるわけにはいかんだろ? ”彼”にも立場があり、それこそ今後の沽券に関わる。君たちの”使い道”を察するに、『部下の身を案じて、共に日本に下った』というカバーストーリーの方が
「……良いだろう。その条件で本国と掛け合おう」
「それと今日の払いは君持ちだよ。ヨシダ」
「!?」
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さて世の中、運の悪い人間というのはどこにでもいる。
例えば、史実の”アメデーオ・ディ・サヴォイア=アオスタ”。
当時のファシスト政権下のイタリアで、王子様と国民人気を二分したとされるイタリア王族サヴォイア家の傍流アオスタ公爵家の若き公爵様だ。
1940年に”イタリア領東アフリカ帝国の副王”にまでなったが、翌1941年にイタリア領東アフリカは英国軍に攻め込まれ、この公爵様もあえなく捕虜になってしまう。
そして翌年の1942年、現在のタンザニアにあった捕虜収容所で肺炎とマラリアを併発し、あっけない最期を遂げた。
名門貴族の最後としては、何というか……かなり華がない。
もう察していただけたと思うが……この世界線でも同じく、イタリアの若いサヴォイア=アオスタ家の公爵が捕虜になっている。
名を”
なんか金ぴかの機動兵器みたいな名前だが、特に深い意味はない。
そこに目を付けたのが、皇国軍並びに皇国上層部だった。
そして、あえて名を明かさぬ部門でこんな会話がなされたという。
「そうだ! 彼を中心に(本国に帰国を拒否されて怨み骨髄の)イタリアンな捕虜達の中心になってもらおう。彼も同じく捕虜に落ちた身分、少なくともイタリア本土の人間よりは当たりは弱いはずだ。そして、アオスタ公爵を中心として”イタリア
「そう上手くいくか?」
「上手くいかせるのさ。流石にこのまま40万近いイタリア人(捕虜)を無駄飯食らいにさせておく訳にはいかんだろ? 道義的にも財政的にもロジスティクス的にも」
「……ああ、要するに”解放軍”を建前にした”
「そうだ。無論、”解放軍”への参加は志願制にする。強制にすれば角が立つが、志願制にすれば義勇兵としての大義名分が成り立つ」
「煽るんだろ?」
「当然だ。そもそも日本人が数十万単位のイタリア人の面倒を見てる現状がおかしいんだよ。”カエサルの物はカエサルに”さ。イタリア人には謹んで故郷へお帰りいただきましょうってな」
「まあ、人道的にも正しいか。装備とかは?」
「基本的に”
「それもそうか。変に皇国軍の兵器を与えて不慣れな装備で事故を多発されても怖いしな」
「そういうことだ。戦闘は皇国軍と英軍が行い、彼らは後方維持に専念してもらう。移動用のトラックや食料、野営資材は提供するが、武器弾薬は自前の物を使ってもらう。無論、手榴弾以外」
「……やけにイタ公の手榴弾にこだわるな?」
「あれ、マジに兵器でなく危険物の類だし」
OTO M35型手榴弾
構造的欠陥(他国手榴弾のような時限式ではなく衝撃作動式信管の採用。キャップカバーが設計上の想定通りに外れない。安全プレートによる撃針の固定が解かれないなど)から不発の代名詞となってしまったイタリア産手榴弾。
しかもただ不発になるだけなら良いが、誤って蹴るなど衝撃を与えれば遅延信管でないため即時爆発する恐れがあり、言わば自然のブービートラップとなる手榴弾であった。
威力じゃなくて、その厄介さから
硬い物にぶつけて衝撃が加わらないと爆発しないとか、手榴弾の使い道を分かっていないとしか思えない設計がチャームポイント。
ある意味、皇国軍をもっとも恐れさせたイタリアン兵器かもしれない。
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