第276話 自動小銃(突撃小銃)のお話 ~StG42とAG43~
「おお、ようやく回ってきたか♪」
おう、フォン・クルスだ。
いや~、今日はかなり機嫌がいいぞ♪
まあ、それには当然、理由があって……ちょっと長くなるが聞いてくれるか?
前世にもあった世界最初のアサルトライフル”StG44”だが、その原型である試作突撃小銃”MKb42”はハーネル社とワルサー社で1942年には完成され、同年の11月には試作銃が実戦テストに持ち込まれ、良好な成績を示した。
だけど、史実のヒトラーの無理解により戦場で有益だと認められたにも関わらず開発中止命令が出されたんだよ。
そして、史実のシュペーア君が中々に強かで、中止命令が出た後も”MP43”なんて如何にも短機関銃っぽい名前に変更して開発を継続、そして先行量産型とも言える銃を供給し、戦場からの「もっと大量のMP43を!」の声にヒトラーは驚き、真相をシュペーア君から聞くも、現場からの声に押されて量産を認めたって経緯がある。
だが、”StG44”の名前の通り制式化されたのは44年で、時すでに遅しだ。
とまあ、ここまでが史実の話。
そして、今生での名前は”StG42”。
まんま史実のStG44だが、名前の通り制式化と大量生産は大幅に前倒しされ、今年(1942年)の11月1日付でまとまった数が随時装備更新されて行く予定だ。
この調子だと計画にある「44年までに400万丁の生産」は十分に達成できるだろう。
んで、ここからは今度はサンクトペテルブルグの話なんだが……
「これでようやく性能比較ができるよ」
「ええ。しかし、驚きましたよ、閣下。もう”サンクトペテルブルグ版の突撃小銃”、その試作品? いや、
とは、何だか久しぶりな気がするシュタウフェンベルク君。
そう、StG42の横に並べられてるのは”AG43”、正式名称は”Automatisches Gewehr 43”。
日本語にするとまんま”43年式自動小銃”、ぶっちゃけてしまうと弾倉周り以外はほぼほぼAK-47ではなく、その発展型の”AKM”だ。
よくわからん理由で”Cruz Gewehr 43(CG43)”にされそうになったが、そこは断固拒否して”AG43”を押し通した。
というか”43年型クルス式小銃”ってなんだよ? 意味わからんわい。
それにこのカタチの自動小銃だぜ? やっぱり”AK”の印象を欠片ほどでも残したいじゃん。
***
まあ、AG43の開発経緯は割とシンプルだ。
去年の終わりから、シェレンベルクやシュペーア君伝いにStG42の試作原型銃、MKb(H)シリーズを定期的に回して貰ったのさ。
確かその話題って前に出したことあったよな?
形式的には、「その試作自動小銃を参考に設計された」のが、AG43ってことになっている。
立ち位置的には、「サンクトペテルブルグ製の簡易量産型StG42」だ。
実際には、設計図ではなく概略図を引いたのは俺だが参考にしたのはMKbではなく、前世の記憶(トハチェフスキーじゃない奴な?)でやけに馴染み深いAKMだ。
まあ、正確にはAKMを8㎜クルツ弾(7.92㎜×33弾)対応に再設計したってのが、事実に近いかもしれない。
ただ、オリジナルのAKMからいくつかの違いもある。
使用弾が違うから弾倉周りの変更は当然として、まずプレス加工で生産されるレシーバーの地金だが、オリジナルの1㎜厚ではなく、いわゆる”RPKレシーバー”と呼ばれる1.5㎜厚の板金になっている。無論、加工精度がシビアになり過ぎないように公差が出ても作動するよう配慮もしてるぞ?
8㎜クルツ弾ってのは、AKMの7.62㎜×39弾より弱装なんだが、如何せん冶金技術もプレス加工技術もまだ未熟でな。強度の安全マージンは取っておきたかった。
また、セレクターはStG42と同じ手元で、親指だけで切り替えできるようにした小ぶりな奴に変更。
AKの大型のも手袋した時に扱いやすいってメリットもあるんだが、使用感はなるべくStG42に合わせた方が良い。同じ理由で、リアサイトもほぼ同じだ。
後はバレルガードとショルダーストック、グリップはベークライトじゃなくて時代的に入手しやすい合板の木製。
銃剣の着剣装置はStG42と共通で発射速度は、感覚的に使いやすい600発/分くらいだ。
無論、オリジナルAKMを引き継いでる部分もあり、AKMの外観的特徴になっていた銃口を斜めにスパッと切ったようなシンプルなねじ込み式のマズルブレーキは健在、それを取り外せばStG42と同じ小銃擲弾も発射できる。
後は内部の大規模な硬化クロームメッキ処理やハンマー・リターダーの搭載もお約束だな。
コンセプトデザインを担った自分で言うのもなんだが、この時代の”うぽって”としちゃあ、かなり量産性の高いものだと思うぞ?
元が頑丈なAKシリーズをデザインベースにしてるから、命中精度はそこそこだがタフだし。
まあ、オリジナルより厚みのある板金やベークライトじゃなくて合板のストック類を使ってるから、サイズ的にはAKMでも重量的には1kg以上重いAK-47と同等の空弾倉付きで4.3kgになったが、これでもStG42よりは軽い。
それに重い分、フルオート射撃の反動処理とかやりやすくなるから強ち悪いことだけじゃない。
ああ、後これは言っておかないと。
機動歩兵向けに折り畳み式の金属ストックを採用した”AG43S”も並行開発してるが、これもほぼAKMSだな。
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というわけで、野外射撃試験場。
面子は興味津々のシュタウフェンベルク君と、自分の関わっていた仕事の成果を確かめたいシュペーア君。本日のお付き当番従兵のドラッヘン君。
そして、実際に自分の部下が戦場で使う”サンクトペテルブルグ
大将って階級で呼ぶのも悪くないが、司令って役職名の方が妙にしっくりくる。
本格的な野外テストは、カミンスキー
「いや、何でいるのさハイドリヒ?」
いや、シェレンベルク(あと、小野寺君も)は出張中だってのに、なんでお前がしれっといんのさ?
「ふむ。新型小銃のテストと聞いてな。総統閣下に1丁土産で持って帰ろうかと」
あー、この世界線のヒトラーってちょっとガンマニアの
「言ってくれれば送ったのに」
「いや、単純に
ふ~ん。まあ、気安いのは俺も変に肩ひじ張らずに済むし大いに結構だが、それは来易いって意味じゃないと思うぞ?
「仕事はいいのか?」
「これも公務だ」
あーなるほど。
またしても、ロクでもない案件持ってきたって訳ね。
***
さて、ドラッヘン君に頼み、留守番のアインザッツ君とツヴェルク君にいつものように冬宮殿の一室で、ハイドリヒと二人だけの会談のセッティングをしてもらった。
射撃テストは順調に終わり、目立った作動不良も問題点も発見されず、命中精度は正直、弾が違うせいかオリジナルのAKMと同等以上に感じた。
とりあえずテストは終わらせ城に戻り、何を聞かさられるのやらと思えば、ハイドリヒは開口一番、
「”バルト海条約機構(Baltische Vertrags Organisation:BVO)”加盟国、特に王室連合がお前を”大公”にすべく動いている」
いや、なんでさ?
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