第181話 魔・王・襲・来!! in サンクトペテルブルグ
「なんで魔王様がサンクトペテルブルグ上空を飛んでるんだろうな……」
1942年初頭、サンクトペテルブルグはJu87Dを操る”ハンニバル・ルーデル”大尉と後席の”エルドリッヒ・ガーデルマン”中尉の来訪を受けていた。
***
「こうしてルーデル
俺は、来客……ルーデル大尉とガーデルマン中尉を”冬の宮殿”の応接室に迎え入れていた。
まあ、予定は聞いてたんだよ。Ju87Dに空対地ロケット弾能力を付与したJU87E型への改修機を受け取りに来るって話は。
少なくともこの時代、飛行機を輸送するのに「実際に目的地まで飛ばして、不具合のチェックと慣らし運転を行う」っていうのは距離によっては珍しい話じゃない。
むしろ地形に特色があり、地続きであり、割と緊急着陸ができる場所が豊富な欧州ならば割と一般的でさえある。
だが、それは普通は”航空輸送専門のパイロット”が行うのであって、
(最前線で、
そのあたりは、流石は
「すまん、
「それは失礼。ルーデル大尉」
そっか、大尉ってことはまだ”空の魔王”へ完全覚醒する前か。
しかし、ガーデルマンが既に相方になってるあたりは……いや、これは誤差として受け流すべきか?
いやそれより、
「ところで”領主殿”とは一体……?」
「違うのか? ここへ来る途中、市民たちがもうすぐ”サンクトペテルブルグ大公領”になるとか、じきに”イングリア公国”が復活するなどと話しているのを耳に挟んだのだが」
(シェレンベルクぅーーーっ!!?)
そういう悪質な噂は取り締まれ、いや、せめて正しい情報に是正しろよ。
「ここはあくまでバルト沿岸諸国の承認を受けた、ドイツ保護領”自由貿易都市サンクトペテルブルグ”となる予定ですよ。現在戦時下の為に、私が総督のような立場となっていますが、いずれ市民により選挙で選ばれた市長が立つことになるでしょうな」
「うむ。そうか」
それにしても……
(すっごいガト○っぽいな)
転生者特有の感覚かもしれないが、言い回しといい声の雰囲気といい、何やらひどくア○ベル=ガ○ーを連想させる。
「ところで、大尉がなぜ自らサンクトペテルブルグまで乗機を受け取りに? しかも、相方のガーデルマン中尉まで連れて」
さっきも言ったが、基本的に機体輸送用のパイロットに任せればよいだけの話だ。
確かに今は、ベルリンまで出てくれば直通の旅客機やら輸送機の定期便はあるけどさ。
他にも鉄道や輸送船もある(現在、港も鉄道網も復興中で完全状態とは言えない)が、それでは時間がかかり過ぎる。
大量輸送にはめっちゃ向いてるんだが。
「う、うむ……」
何やらちょっとばつが悪そうに、
「私の乗機、それも最新鋭機が回ってくるという聞いて居ても立っても居られなくなってだな」
およ?
結構、可愛いところあるでないの。
(あー、そういやルーデルって出撃停止食らう事、多々あったんだよな。特に合わない上官の時とか)
なんかやりにくそうだし、少し砕けた感じにしますか。
「ルーデル大尉、はやる気持ちは理解しよう。だが、安心するといい」
「何をだ?」
「立場上、詳細は言えんが……君が次に向かう戦場は、潰すべき”赤い標的”に困ることはない。存分に潰したまえ」
そりゃあもう、いやって程出てくるのは保障するさ。
潰しても後から後から。それこそ、「いい加減にしろっ!!」って叫びたくなるくらい。
「それは素晴らしいっ! 最高ではないかっ!!」
おおっ、なんかルーデルの体からブワッと
「飛行場に案内しよう。ああ、何なら新装備の空対地ロケット弾の試し打ちでもしてみるかね? 射爆場もある」
「おおっ! 総督閣下は、話が分かるなっ!!」
******************************
『おおっ! まるで
『ちょっ! 大尉、落ち着いてください! 子供じゃないんですからっ!』
「すげ……」
やっぱ生ルーデルが操るスツーカは、迫力が違った。
というか、扱うの初めての筈の新装備、完璧に使いこなしてるよ。
具体的にNOEみたいな超低空から高速で突っ込んできて両翼の下に吊るしたロケット弾全弾発射、同時に主翼のMG151/20㎜で牽制射撃しながら反転急上昇(いや、ホントによく失速しないよ)、敵の対空砲の範囲外まで上昇したら捻りこみで反転急降下(重いJu87Eでよくあんな運動できるもんだ……)、20㎜ぶっ放しながら
実は地味に怖いのはガーデルマンだ。後部備え付けたMG81Z連装7.92㎜旋回機銃で、最初の急上昇と急降下爆撃後の反転急上昇の計2回、涼しい顔で地上掃射を、それもかなり正確に撃ち込んでいた。
ルーデルの機動は明らかにJu87Eの耐G限界に挑戦するような飛行だ。その中で顔色一つ変えずに
(魔王の相棒は伊達じゃないってか?)
ガーデルマン、俺の知ってる歴史でも、後部機銃でソ連のエースパイロット機撃墜したりしてるんだよなぁ。
あの”フライング・ドクター”も、ホント只者じゃねーや。
流石、前世でも数々の逸話を残すだけのことはあるよ。
それよりも、
「やっぱ、○トーじゃん」
***
「実に見事な機体だった!」
「そりゃ良かった」
興奮さめやらぬガトーに、
「出来は……ってまあ、聞くまでもないか。満足できたようで何より」
「うむ。総督殿、この機体はそのまま持ち帰ってよろしいか?」
「整備とデータ取りが終わったらご自由に。ついでに増槽もつけておこう」
意外なことに、Ju87Eは増槽を装着すると経済巡航で1,500㎞ほども飛べる。
つまり、サンクトペテルブルグからベルリンまで楽に飛行できるのだ。
「トラブルが無ければベルリンまでは飛べるはずだが、ダンツィヒの空軍基地で念の為着陸、補給と整備と休息を取り、翌日、ウルム基地に戻るといい。連絡は入れておこう」
サンクトペテルブルグからダンツィヒまでが1,000㎞弱、ダンツィヒからウルムまでが約900㎞。
まあ、二日がかりの途中休憩挟んで給油1回なら、戦闘するわけでもなし無茶なフライトプランではないだろう。
「ぬぅ……できるだけ早く戻りたいのだが」
「整備と休息はとれるなら時間をかけるべきだ。それに戦争は当分終わらないし、ソ連も当分消える事はない。焦ることはないさ」
「総督殿に感謝を」
「いいさ」
***
俺は南へ飛び去るルーデルたちを俺は見送りながら、つい思ってしまう。
「想像以上に濃い御仁だったな……」
まあ、でもこれで……
「Ju187”
飛行機に積むには本来ならデカすぎる”Mk103/30㎜機関砲”を
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