第165話 エンジニアなら一度は言ってみたいセリフ & シモヘイは、一度ロレンス中佐に謝った方が良いかもしれない話
さてさて、富士の裾野の御殿場には、日本皇国陸軍の巨大な演習場があるのは有名だが、そこに隣接する形で各種新装備開発局・研究所があるのは存外に知られていない。
そして本日のオープニングは、その中の一角にある”狙撃銃開発チーム”の扉がノックされる所から始まる。
「主任! お喜びください! ”
「なんと!」
眼鏡で白衣の開発チーム主任は、感動と興奮にわなわなし、
「こんなこともあろうかと!……こんなこともあろうかと!! ついにエンジニアとして一度は言ってみたい台詞を言える時が来たっ!!」
そして、開発チーム全員を見渡し、
「諸君! 喝采をっ!! 我々が先んじて開発していた《b》”真・ヘカテーたん”《/b》がついに日の目を見る時が来たのだっ!!」
「「「「「おめでとうございます! 主任!!」」」」」
彼らの視線の先には、試製二式長距離狙撃銃により太い銃身とゴツいマズルブレーキ、ショックレジスト機能付のアジャスタブル・ショルダーパッドに無反射コーティングのスコープを装着した、補助グリップと二脚が厳つい……全体的にマッシブな方面に強化された55口径ボーイズ弾仕様の”試製二式
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「まさか、もう55口径ボーイズ弾仕様の二式長距離狙撃銃、ああ、”試製二式改特殊長距離狙撃銃”ってのが制式名称なのか? ともかくもう来るとは思わなかったぜよ」
何でも開発部に意見書を送った俺が「言い出しっぺの法則」でテスト担当者に抜擢されたらしい。
いや、それでいいのか皇国陸軍。
「予め作ってたんじゃないっすか? 『こんなこともあろうかと!』とか言いながら」
いや、それどこのウリバ○ケだよ?
たまに思うんだが、小鳥遊君ってホントは転生者じゃないのかい?
いや、でもそれっぽい雰囲気はしないし。マヂに謎だぜよ。
ああ、下総兵四郎だ。
先日の休暇は、ナーディアちゃんと妹分たちの夢の狂宴、ぺったん娘とちみっ娘によるゴールデン・ナイアガラショーを楽しんだ。
というか、なんか小さなより妹分が増えてた気がするんだが……
何かねだられたので、色々した気もするがナーディアちゃん曰く問題ないらしい。
少々イジり過ぎたせいかお漏らし癖がついたり、しーしーやおっきいのするたびに軽くイクようになったちみっこいのが続出したが、
『いずれ全て旦那様の物になるのですから、(社会生活不適合になったところで)全く問題ありません♡ むしろ、もっと可愛がってあげてくださいませ。旦那様の事以外、何も考えられなくなるぐらいに』
ちょっと微笑に凄みがあった。
まあ、俺のプライベートなぞどうでもいい。
そういえば、身内ネタで恐縮だが、先日(4/1)の辞令で隊長が少佐から中佐に昇進した。
と言っても本人曰く、
『給料と退役後の恩給が増えただけだ。戦死したら遺族年金だろうがな。やることは大して変わらん』
至ってクール。
実際、一応俺達は「機甲化増強狙撃大隊」って形で再編され、狙撃大隊直轄の車両が回ってきたり、それに伴い大隊付の専門系の整備2個小隊が来たりといった感じだ。
ほら、俺達狙撃科は少々編成が特殊で、例えば狙撃手と観測手の2マンセルで1個分隊扱いになるだろ? なので、狙撃大隊と言っても人数的には精々歩兵1個中隊くらいだ。
そもそも狙撃ってのは、大人数で行うような戦術じゃないしな。
あと、管轄的には司令部直轄……というか、一応は”特殊作戦任務群”に該当するらしい。
いや、そのことを隊長に聞いたらめっちゃ呆れ顔をされて、
『この間の阻止ミッション、50口径の7連発弾倉10個を空にして、お前と小鳥遊で合計100人以上射殺したよな? 1ミッションで楽々増強小隊を壊滅させるような狙撃手がいるような部隊が、一般扱いなわけないだろう?』
ド正論で返されてしまった。
いや、薄々そうなんじゃないかな~とは思ってたんだよ。
海軍や海軍陸戦隊だけじゃなくて皇国陸軍も英国の影響をかなり受けている。
リビアでイタリア軍とドンパチしてる時、”沈丁花”なる特殊部隊とエンカウントしたのを覚えているだろうか?
あの手の特殊部隊ってのは前世でも今生でも英国が元祖で、1940年に編成された”ブリティッシュ・コマンドス”が「始まりの部隊」とされている。
その系譜で最も有名なのが”Special Air Service”、”英国特殊空挺部隊”だ。”SAS”の略称は聞いたこと無いだろうか?
SASは、米国の特殊部隊”デルタフォース”が参考にした部隊だ。
今生だとこのノウハウを英国は米国に渡す気はないだろうが……日本とどういう取引があったのかは知らないが皇国軍にもノウハウが伝わり、いくつもの”
ただ、そんなグリーンのベレー帽が似合いそうな連中だけが特殊部隊という訳ではなく、俺達みたいな狙撃特化の部隊も任務の性質上”そちら側”に該当するんだそうな。
その割には、割と色々ヌルめな部隊の気もするが……
とりあえず、俺達がやることはリビアだろうがチャドだろうが変わらない。
スポッターの小鳥遊君と
***
さて、機甲化とか自動車化とかになったが、相変わらず俺と小鳥遊君、そして継続してナビゲーター兼通訳兼
いや、積載重量や移動速度は自動車に劣るけど、こと砂漠の移動に関しては慣れてしまえば(そして、個人携行装備に毛が生えた程度の重量なら)車両よりラクダの方が圧倒的に便利で優位なんだってばさ。
何より砂に埋もれないのが良い。
ちなみにナーディアちゃんが同行してるのは砂漠に慣れたナビゲーターというのもあるけど、まず通訳という意味も大きい。
いや、俺も小鳥遊君も北アフリカに来てからそこそこ長いから、標準アラビア語やアラビア語リビア方言とかならある程度いけるが、チャドはアラビア語チャド方言やフランス語に加え、120以上の先住民族の言葉があるらしい。
驚いた事にナーディアちゃんは、チャド方言やフランス語だけでなくチャドで喋られる大抵の言語に対応可能らしい。
実は、これは”交渉役”にも通じることなのだが、某大佐がアオゾウ地帯侵攻の口実にしたように、かつてチャド北部は元々サヌーシー教団の勢力圏だったのは事実だ。
そして、それは現在も根強く残っていた。
いや、サヌーシー教団総本山ともいえるアルバイダやベンガジを含むキレナイカ王国樹立に従い、最近では復権しつつあるようだ。
日本人にはピンとこないかもしれないが、砂漠の民の宗教的ネットワークは決して侮ってはならない。
厳しい環境だからこそ、必然的に強くなるものは確かに存在する。
逆説的に言えば、皇国軍がリビア・イタリア軍を圧倒できたのは、サヌーシー教団を味方に付けられたからというのも要素として大きいのだ。
さて、小難しい話はさておくとして、サヌーシー教徒と思われるキャラバンやトゥアレグと出会う度(ナーディアちゃん曰くサヌーシー教徒同士はわかるらしい)に情報取集を図るナーディアちゃん。
「なんかみんな協力的だね?」
「サヌーシー教団の復権が、嬉しいんですよ♪ 西洋人の都合でここら辺一帯はおかしな具合に国境が決められてしまいましたが、本来ならばチャド北部全体がサヌーシー教団の勢力下と言って良いくらいなんです」
そういえば、トリポリタニア共和国領域より南部のフェザーン首長国領域の方がサヌーシー教団の影響が強いって言ってたっけ。
そこと地続きのチャド北部なら当然か。
第一次世界大戦後、イタリア人やフランス人が来るまでリビアもチャドもオスマン帝国の勢力圏だった。
その頃も1908年の青年トルコ人革命(軍事クーデター)以降はサヌーシー教団は弾圧対象だった。
だが、その激動と弾圧の歴史を教団は乗り越えた。
そうであるが故の強い団結だ。
「じゃあ、本来の”あるべき姿”を取り戻さないとな。”
「はいっ!! フランス人を全てフレンチフライにしてやりましょう♡」
いやさ小鳥遊君、後ろで「べーよ……大尉殿、すっかりアラブ系神兵やん……どーすんだよ、これ……」とか呟かない。
ちょっとネタに走っただけじゃん?
撃つのはオートローディングのショットガンじゃなくて、より大口径の狙撃銃だけどさ。
というか偉大なる先駆者、”アラビアのロレンス”だってこのくらいやったろ?
少しだけ蛇足な補足を。
まず最初に、当事者の名誉のため一つだけ。
史実の”アラビアのロレンス”ことトーマス・エドワード・ロレンスは、生涯独身だった。
間違っても「王族の末娘と戦時中に婚前旅行を楽しみ、ましてや王女の取り巻き(妹分=つまり、サヌーシー教団の上層部の娘達)のロリだかペドだかに囲まれる」なんて状態には至ってない。
そして、ロレンスは「(アラブで)敵につかまり激しい拷問の末、未知なる快感の扉を開いた」事を
この男が英雄に数えられるのに、「変態」「露出狂」などと今なお評価される一因だった。
そしてここからが重要なのだが……薄々お気づきの方もいらっしゃるだろうが、放尿癖つくまで開発するとか下総兵四郎はむしろ”逆”の資質だ。
ただし、スパンキングのようなハード路線ではなく……じゃあソフト路線か?と聞かれれば、方向性とか解釈が違うとしか言いようがない。
詳細は語らないが物理的なそれよりも、こう何というか……悪意の欠片もなく(むしろ、情愛と善意しかなく)倫理観や道徳心や羞恥心や自我を快感でグズグズに蕩けさせ、溶け出たそれを快楽と悦楽で侵食して塗り潰して塗り固める感じ、だろうか?
何か色々と刻み込まれ、後戻りできなくなった娘もいるようだが。
最後に口が裂けても……
”بسم الله العظيم اضرب كل ظلم(偉大なるアッラーの名に懸けて、全ての不義に鉄槌を)”
なんて
これは最早、ネタとかそういう話では無いのだから。
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