第11話 タラントでは火祭りが開催されるようですよ?
「こりゃ”隼”共に食い尽くされたかねぇ」
俺、”藤田
(最新鋭のゼロ戦を持ち出してきたのに、これじゃあ甲斐がないったりゃありゃしねぇな)
制式名称を言えば、”零式艦上戦闘機・二二型”。
と言っても、「前世で俺が知ってるゼロ戦二二型」とは形は似たり寄ったりだが、中身がかなり違う。
まずエンジンが中島製の”栄”ではなく、機体設計と同じく三菱製”金星”の五〇番台だ。
離昇出力1,300馬力とまあこの時代のエンジンとしては高出力な方で、これに推力式単排気管を組み合わせている。
まあ、栄よりややデカいエンジンなので機首に機銃は搭載されなく、また前世のゼロ戦では”売り”の一つだった20㎜機関砲はまだ十分な性能な物の開発が終わって無いとのことなので、左右の主翼に2丁づつ計4丁のホ103/12.7㎜機銃が搭載だ。
まあ、火力云々はさておき、前世の日本陸海軍みたいに「同じ口径の航空機銃なのに弾丸違う」なんてことにならなくて何よりだ。特に4丁共に弾道特性が同じってのが扱いやすくて良い。
ついでに言えば、主翼の燃料タンクもセルフシーリング型だから、なんか色々なタイプのゼロ戦の特徴混じってんな。
(そういや、下で大暴れしている九九式艦爆や後続の九七式艦攻も五〇番台の金星エンジンで統一してたっけか)
まあ、空母ってのはスペースも搭乗員の数も限られてっから、パーツの共用化や整備員の負担の軽減って理由なら納得も行く。
まあ、中島はゼロ戦より予定生産数の多い”隼”の栄エンジンや次期主力エンジンの”誉”の開発で今頃はてんてこ舞いだろうからちょうど良いのかもしれん。
後は無線機とかの性能も良いと思うぞ。当時の資料(前世の頃のゼロ戦な)を読む限り多分だが。英国のそれと同等らしく、少なくとも雑音だらけで使い物にならないってことは無い。
さて、本来なら”瑞鶴”隊の戦闘機乗りの俺が、タラント上空で何をやってるのかといえば、”エアカバー”だな。
要するに、集束爆弾で高射砲陣地潰しまくってる九九式や、もうすぐ攻撃態勢に入る九七式の上空支援、上がってくる敵の迎撃機から味方を守る簡単なお仕事だ。
(ただし、何故か敵機は上がってこないんだけどな)
タラント港には隣接した航空基地があったはずだが、
「いや、ホントにマルタの鷹ならぬ”隼”共に全部食われたのか?」
それならそれでいいんだけどね。
油断するつもりは無いが、正直拍子抜けだ。
(できれば、近場の基地から戦闘機上げるくらいの根性は見せて欲しいところだが……)
いや、それは詮無き事か。
この時期のイタリア戦闘機は脚(航続距離)が短く、速くもない。
おそらく主力はマッキの
これでは少しでも離れた基地から飛んで来たら、ほとんど滞空できる時間は無いだろう。
「それにイタリアは未だ
それはともかく、
「来た来た」
事前ブリーフィング通り、九九式艦爆による高射陣地掃討が終わり次第突入する手はずになっていた大型爆弾の運び屋達。
「第一波の
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1940年において日本皇国軍において、”攻撃機”というのはエンジンの数や搭乗員数、海空の区別なく「航空魚雷を搭載し、対艦攻撃を行う機体」ということになる。
ちなみに陸攻、”陸上攻撃機”というのは「陸上から発進して対艦攻撃を行う機体」であり、「陸上を攻撃する機体」ではない。
この言葉の定義が変わるのは、戦後の話になる。
また、同じ意味で艦上攻撃機は「空母から発艦して魚雷で対艦攻撃を行う機体」となる。
九七式艦上攻撃機もそういった機体の一つだが、かと言って”魚雷しか積めない機体
機体強度の関係で急降下爆撃こそ不可能だが、最大800kgの爆弾を搭載し水平飛行による爆撃、水平爆撃が可能な設計になっている。
それもそのはずで、九一式航空魚雷の重量は約800kg、それを抱えて海面ぎりぎりを飛行して敵艦に肉薄、魚雷を投弾するのが攻撃機の役割なのだ。
そして今回の九七式の役割は、魚雷での対艦攻撃ではない。
まだイタリア戦艦は修理不可能な完全破壊には至っていないが、先の攻撃の後にマルタ島の空軍偵察機が持ち帰った航空写真やその他の情報を精査した結果、「敵の主力艦艇は全て損傷し、すぐに出航できる状態にない」事が判明した。
だからこそ、”軍艦以外の優先すべき目標”に殺到したのだ。
「やめろ……やめてくれっ!!」
消火班を率いていたイタリア海軍、フェルッチオ・フェラーニン少尉は悲嘆の声上げてしまう。
運が悪いことに、彼は目撃してしまったのだ。
それが1発ではなく数機から一斉に投弾され、まるで吸い込まれるように船舶用の”
この時、”翔鶴”と”瑞鶴”の第一波攻撃隊に属する九七式が胴体下に懸架していたのは、”九九式八〇番五号爆弾”。
そう、マルタ島の皇国空軍第15飛行団”吞龍”隊が機内爆弾倉に抱えて飛んできて、無傷のイタリア戦艦に落として大損害を与えた
そして、タラント港の重油タンクの防御値は、軍事基地の設備だけあり純粋な民生用より上ではあったが装甲化された戦艦の水平甲板よりも低かった……いや、そもそも40cm級の主砲弾の直撃に耐えられる重油タンクなど、この時代のイタリアのどこを探しても無かった。
そして、結果は推して知るべし。
800kgの爆弾が、隔壁を貫き”重油タンク
だが、中から破裂するタンクに絶望の表情を浮かべるのは少々早すぎた。
繰り返すが、これは2隻の正規空母から行われる攻撃の第一波、
そして、一次攻撃隊とほぼ同じ規模の二次攻撃隊は、既に発艦を始めているはずだった。
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