第42話 天空の隠し部屋
「閉館時間です。お取引願います」
「閉館時間です。お取引願います」
「緊急事態につき、強制排除モードに移行します」
わらわらと詰め寄ってくるゴーレムたち。
「お前たちに罪はない……でも、俺の行く手を阻む事は許さない!」
右腕のプラズマブレードを起動する。左腕のバルカンを掃射して、ゴーレムたちの中心に躍り出る。
ボディプレスをするように全身で取り押さえようとするゴーレムたちを、両腕の兵装で薙ぎ払う。
それでも圧倒的な数。身を翻し全方位を攻撃する。火中で舞うブレイクダンス。
俺の演武はほどなくして終わり、粉砕されたゴーレムたちの残骸と床に散らばった本が視界を埋めつくす。
大気中に残った硝煙とプラズマ粒子が揺れる中、後方でなにかが動いた。
とっさに左腕のバルカンを構えるも、射撃することなく固まった。
ただじっと、こちらを見つめてくるゴーレムが立っていた。
「ロビン?」
名を呼ぶと、ロビンと思しきゴーレムは無言のまま首肯し、体の向きを変えて歩き出した。
「あ、おい! ……ついてこいってことなのか?」
ロビンに導かれ、大図書館の奥へと進んでいく。
とある扉を開いて中へと潜り込むロビン。丸いその背を追って行く。
目いっぱいに詰め込まれた埃まるけの本棚と、本棚から溢れだした本が床の上に積み上げられている。
置いてある本はどれもこれも碌に手入れもされていない古い本ばかり。
「書庫か……」
通路の奥の奥。書庫の最深部へと到達すると、ロビンはうずたかく積まれた本の前で立ち止まった。
えっちらおっちら本を抱き上げてはどかしていく。俺も手伝った。
ほどなくして床が見えるようになると、床に四角い切れ込みが見えた。
切れ込みについてる取っ手を持ち上げるロビン。ぽっかりと口を開いたその先は、どこまでも暗闇が広がっている。
ロビンは躊躇することなく飛び込んだ。俺も続く。
ざらついた地面の上に片膝をついて着地する俺。地下空間の壁には螺旋状に石の突起が生えている。
降りてきたばかりなのに、ロビンはその突起を踏みしめて上へと登っていく。
「やれやれ、降りたり登ったりせわしないな……」
「…………」
がりがりと頭を掻きむしる俺を、ロビンが無言で見つめてくる。
「わーってるよ」
文句を垂れても仕方がない。ロビンに続いて螺旋階段を登っていく。
とうに図書館を超える高さまでやってきた。それでも階段は続いている。
いやこれ、図書館どころかその上にある時計塔の高さも超えているんじゃないか?
そんな疑問が過って数刻。無限回廊かと思われた階段がいよいよ終焉を迎え、目の前に三日月が見えた。
濃紺に染まった夜風に抱かれる。本物の星空が頭上で瞬いている。
平面的に見えるすべての星々は、その実確かな奥行きを持っている。
無限に広がる暗闇の中、孤独に滞在する星々。頭上から降ってくる寂寥感に押しつぶされそうになる。
足元には大理石のような斑な石が広がっている。さながら白い円形のステージ。無駄なものは一切なく、だだっ広い空間が広がっている。
磨き上げられた白い床には、半透明の自分が映り込む。
ここは、ドームの外か。
どうやら大図書館の地下とドームの頂点のこの場所は、魔法的な力によって繋がっていたようだ。
周囲を見回すと、孤独な夜空と虚空の大地の間に、腕ごと胴体を縛られたエマとニケが座っていた。
「エマ! ニケ!」
ドームは魔法的な力を反射する。だから、いくらソナーを放ってもドームの外にいた二人の居場所がわからなかったんだ。
二人に駆け寄ろうとすると、ステージの中央に黒い渦が出現した。
中から出てきたのは、二人のペスト・マスクを被った魔術師。二人の間に立っているのは、ゲイルだった。
「まさかこの場所を見つけるとはな。クルーゼすら知らん、秘密の場所だというのに……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます