予想外すぎるッ!!

 妙な空気が室内に漂っていた。

 夢香も祥雲も若干警戒している。なんだこのピリピリした空気。……おかしいな、こんなはずではなかたのだが。

 このままではまずい。

 重苦しい空気を吹き飛ばすつもりで、俺はアニソンを入れた。


 テンション上がるロック系のヤツだ。



「~~♪ ~~~~♪」



 世の中の不満をぶちまけるような曲で爽快なんだよな。これなら二人もノってくれるはず。


 ――チラッ。


 夢香と祥雲の様子を伺うと、二人とも画面に食い入るようにしていた。良かった。とりあえず、不穏な感じはなくなった。


 そうして歌を終えると、拍手が巻き起こった。



「さすがお兄ちゃん! イケボ~!」

「……平田くんがこんなに歌が上手いとは。ブラボー」



 二人から絶賛され、俺は照れた。

 女子に褒められると三倍嬉しいな。


「あ、ありがとう」


 マイクをテーブルに置くと、二人とも寄ってきた。……近っ!

 いい匂いがして俺は頭がクラクラしそうになった。これはまずいって。


「次は、わたしかな~」

「平田くんの妹さん。次は私です」


 あ~、またバチバチしてるし。

 ここは、俺がしっかりしないと。


「落ち着け二人とも。じゃんけんで決めればいいんじゃないか」


 夢香も祥雲も納得した。

 お互いに見合って探り合っていた。

 そんな殺伐としなくともいい気がするが……。



「「じゃんけん――!! ポンッ!!」」



 早くも勝負が決まった。



 夢香:パー

 祥雲:グー



「やったぁ~~~!!」

「くぅ…………」



 喜びまくる夢香。一方で祥雲は本気で悔しそうに唇を噛んでいた。



「さあ、夢香。存分に歌え」

「うん、もちろんアニソン!」



 悩むことなく曲を入れる夢香は、マイクを握りしめた。

 聞いたことのある有名なアニソンが流れ――夢香の美声が部屋内に響き渡った。



 * * *



「――ふぅ、歌い終わったぁ」



 夢香は満足そうにマイクを置く。

 俺も祥雲も終始テンション爆上がりだった。

 なんだかんだで良い雰囲気になったな。



「夢香ちゃん、こんなに上手かったんだ……負けたわ」



 なぜかショックを受ける祥雲。自信を喪失さえしているように見える。大丈夫かなぁ。


「次は祥雲の番だな」

「……う、うん」



 端末で選曲する祥雲。ちょっと焦っている?

 しばらくして祥雲の選んだ曲が流れ始めた。なんだか昭和感のある渋い曲だ。


 まさかの演歌だ。


 拳を強く握り、力強く歌い始める祥雲。


 これは予想外すぎるッ!!

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