焼肉パーティ
まさかの演歌に驚く俺と夢香。
力強い感情ある歌に、ただただ圧倒された。
「――以上……です」
歌い終わると顔を真っ赤にして申し訳なさそうにしていた。
「「おおおぉぉ……!」」
俺も夢香も拍手喝采。
祥雲を素直に讃えた。
彼女の歌は独特な世界観があったけど、これはこれで味があって心に来るものがあった。
「な、なんだか恥ずかしいな」
「祥雲さん、やるね! 演歌とは思わなかったけど」
「いやぁ~、ちょっとウチのスナックのバイトを手伝うことがあってね」
「え、祥雲さんの家ってスナックなの!?」
「まあね。ママが経営してるの」
これまた意外すぎるッ!
てか、家がスナックとか面白過ぎるだろ。それで演歌にも詳しいわけか。お客さんの年齢層がよく分かる。
その後も祥雲と一緒の時間を過ごし、なんだかんだ楽しいカラオケになった。
二時間後。
「――さて、時間になった」
「じゃあ、私は部屋に戻るね。フリータイムで最後までやるつもりだから」
「凄いな、祥雲さん。喉大丈夫なの?」
「平気平気。ちゃんと喉のケアするし」
「そうか。じゃあまた明日」
「うん、じゃあね、平田くん。それに、夢香ちゃんも」
夢香は少し照れ臭そうにしていた。
最初は敵視していたけど、今はなんか祥雲を尊敬さえしているようだった。
「……はい、祥雲さん。また遊んでください」
「こっちこそ、お邪魔してごめんね」
爽やかな笑みを浮かべ、部屋から去っていく祥雲。なかなか楽しかったな。
俺と夢香は受付へ向かい、料金を精算。
そのまま街へ繰り出した。
* * *
買い物へ向かう道中、夢香は無言だった。
「どうした、不気味なくらい静かだけど」
「そ、それは……その」
「言ってみろ。相談くらいは乗るぞ」
「お兄ちゃんって祥雲さんみたいな普通の人が好きなのかなって……」
そんなことを気にしていたのか。
でも、地雷化を止めるいいキッカケになるかもしれないな。
「祥雲は清楚だよな。普通の女子高生って感じで。スナックの家だとは思わなかったけどさ」
「そ、そうなんだ。わたしも普通に――」
「え?」
「ううん、なんでもない! わたしはわたしだもん。祥雲さんに負けないくらい、もっと可愛くなるからねっ」
……あれ、これは逆に火をつけてしまったのだろうか!? まずいな、夢香の地雷化は更に進化していくのか……。
スーパーで買い物を済ませ、アパートへ帰った。
俺はいつも通り飯を作っていく。
今日は夢香も手伝ってくれた。
「よし、下準備は出来た。今日は焼肉パーティだ」
「わぁ~い。家で焼肉とか豪勢だね」
焼肉専用のプレートも準備したし、あとは焼きながら白ご飯食べていく。秘伝のタレも用意したし――最高に贅沢だ。
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