ヤンデレ&メンヘラを併発!?
街中は活気がありつつも、のびのびしている。
日曜日の割には少し静けさがあるように感じた。俺は人混みが嫌いだから、これくらいが丁度いい。
西の商店街を抜け、少し閑静な道路を歩くと駅前にカラオケ店はあった。
だが、そこへ入る前に隣接する“本屋”へ入った。
「……? お兄ちゃん、本を買うの?」
「欲しい漫画がある。買っていくついでに、あるモノを貰っていく」
「あるモノ?」
夢香は頭上にハテナを浮かべていた。
そうだろうな。
けど、直ぐに分かる。
まずは本屋に寄って愛読している漫画を購入。レジの横に置いてある自由にお取りくださいのチケットを持っていった。
「これでオーケー」
「漫画と……チケット?」
「これね、カラオケ一時間無料券さ」
「おー! そんなのあるんだ」
「この本屋よく使うし、偶然見かけてね」
「そういうことかー。これで一時間お得だね」
フリータイムでやるという手もあるが、一時間無料券を合わせた二時間で十分だからな。料金的にも一時間の方が安いし。
隣のカラオケ店『みけねこ』へ入った。
更に、俺はアプリで会員登録を済ませてあるので、受付手続きは一瞬で終わった。
部屋番号を受け取り、ドリンクバーで飲み物をグラスに注ぎ――そのまま部屋へ向かう。
二階の……前と一緒の『230番の部屋』だ。
なにかとこの部屋に縁があるな。
ヒトカラでも、よくここに指定されるし。
「到着っと」
「前と同じか~。じゃあ、お兄ちゃん襲ってもいいよね!?」
「ダメだ。大人しくしなさいっ」
「ちぇ~」
ふかふかのソファに座った瞬間、部屋の扉をノックする音が響いた。……うぉ、ビックリした。誰だ?
扉の方へ向かうと、そこには見知った顔がいた。あの腰まで伸びる美しい黒い髪は、間違いない。
「……祥雲さん?」
「や、やあ~、平田くん。偶然だね」
「凄い偶然だな。祥雲さんもカラオケだよね」
「もちろんだよ。隣の部屋、220番なんだ」
「隣の部屋か。近いな」
「こっちはフリータイムでずっとやってるんだ」
どうやら、祥雲もカラオケが好きらしい。今はたまたま飲み物を取りに出ていたところらしく、ふと俺の存在に気付いたようだ。
まさか、こんなところで会うとはな。
「俺は義妹の夢香と一緒に二時間カラオケさ」
「え~、いいなぁ……。デートしてるの?」
「デートっていうか、いつものノリっていうかね」
「そっかそっか。私も少し一緒していいかな」
「うーん、夢香に聞いてみる」
俺はいったん部屋に戻って、夢香の方へ――うわッ!
「お兄ちゃん……なに浮気してるの!!」
膨れっ面で不満を爆発させていた。
いかんいかん、これ以上怒らせるとヤンデレ&メンヘラを併発しかねない。俺は容赦なく抹殺されて命はないだろう。
「まあ、待て。夢香、祥雲さんは純粋に俺たちと遊びたいだけだ」
「むぅ。でもぉ~…」
「夢香、お前は可愛い。最強の可愛い……!」
「ほんとぉ!? じゃ~、少しだけね。ほんの少しだけだからね!」
なんとか許しを得た。
……よしっ。
たまには違う空気を取り入れることも大切だ。換気して新鮮な空気を取り入れるように、新しい風を吹かせないと。
それに祥雲さんはクラスメイト。
無碍にはできない。
あと、あわよくば清楚で普通の女子高生である祥雲を模範として、脱地雷化に繋がってくれればという淡い期待もあった。
夢香の地雷化は日々進化しているからな。なんとか……なんとかして普通人に戻したい。
そんな期待を胸に、俺は祥雲を招き入れた。
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