19話 俺は戦えないが役に立つ

神威しんいくんに早く能力を扱える様になって貰わないとね。暴走状態なら強いってなると扱いに困るもの」

「俺だって好きで暴走した訳じゃ……」

「それは分かってるけど〜今のままじゃ戦えないよね〜」

 妹にすらこう言われると立つ瀬が無い……。

 

「神威くんの今の役割は邪鬼ホイホイよ。自覚を持ちなさい」

「おまっ……そんなゴ○ブリホイホイみたいに言うなよ!」

 

「例えとしてこれ以上のモノってないでしょ?」

「ぷっふふふっ」

「おい、桜夜笑うなって……」

 

「だって笑、おかしくって……あんなにカッコ良かったのにっあっははは」

「頼むから止めてくれ」

「ふふっ……そうね。あんまりイジメても可哀想だし……揶揄からうのはこれくらいにして──────さ、着いたわよ」

 

 俺達はそんな話をしてる間に邪鬼やイルと戦った海岸の近く、木々がまばらに生えている丘に来た。そこにはほこらの様な物がぽつんとあるだけの殺風景極まりない場所だった。


 「見た感じ邪鬼は居ないけどな〜?本当にここであってるのか?」

「こういう時こそお兄ちゃんの能力ちからを発揮するチャンスだよ!」

「そうね。神威くん向こうの木まで行って帰って来てくれるかしら?」

 そう言って蘭子らんこは10メートルほど離れた木を指さす。

 

「そんなんで出てくんのか〜?」

 半信半疑になりつつも能力ちからをどう使えば良いのか分からないので試してみる。

 

 特に何も考えず歩き、木まで辿り着いた。何となく木にタッチしてから後ろを振り返り、蘭子に『やっぱ何もなかったじゃねぇか』と文句を付けてやろうとしたその時。

 

 視界の端に"黒い影"が横切る。

 

 ───邪鬼だ!

 

「うわっ」

 思わず情けない声が漏れる。反射で避けようとするが一秒と掛からず体で吸収してしまう。

 

「まさかこんなに効果があるとは───」

 蘭子は自分で提案したくせに驚きを隠せていない。特に確証なく提案してたのがバレバレだぞ?結果的にはそれが正解だったが……。

 

「よ〜し! じゃあ特訓開始だ〜!」

 

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