6話 俺はお兄ちゃんだぞ!

「お兄ちゃん逃げてって言いたいけどこれは無理かもぉ~」

確かに人一人通る隙間がないほどみっちりと邪鬼に取り囲まれている。


 「俺はかばわなくて大丈夫だ。邪鬼を滅することを優先してくれ」

 「えっ?でも邪鬼に取りかれると大変だよ?」

 桜夜は早速飛びかかってきた邪鬼を処理しつつ言う。


 「神威君は邪鬼に耐性があるのよ」

 同じく蘭子も邪鬼を滅しながら答える。


 「そうなの?聞いてないんだけど!」

 「言ってないからな!さっきまでは普通の女子高生JKだと思ってたし!」

 そう答える間も邪鬼の数は減りつつあるが二人の手をすり抜けた邪鬼が俺の体に抵抗なく入ってくる。

 「お兄ちゃん!」

 桜夜が必死な形相で叫ぶ。


 「心配するなって!この通り平気だ!」

 妹を前に多少強がっている部分はある。一体目は何も問題なく吸収出来ているが、ここからは未知数だ。

 一度は上手くいったのだから後で蘭子に滅してもらえばいいとは思う。しかし一体なら平気だが、二体目以降もそうである確証は無い……。


 「神威くん分かってるとは思うけど無理しないでね!」

 邪鬼を桜夜とは違い武器を持たず、まるで演舞を踊っているかのように滅しながら釘をさされる。


 「分かった!」

 そうは言っても俺に出来ることは邪魔にならないように立ってるか、壁役として時間を稼ぐ位しかない。歯痒はがゆい時間が続く。


 しばらく後に気づく。

 邪鬼が明らかに俺を狙って来ている。取りこぼした邪鬼を、二体三体と吸収する内にそう思った。何故かは分からないが先に俺を潰したいらしい。一応何体か吸収しても今の所は問題ないが上限は分からない。可能な限り避けつつ、戦う二人を応援する。

 

 「二人とも頑張れ!」

 「言われなくても!」

 応える蘭子の表情はけわしい。それだけ余裕が無いという事か……。

 

 「キリがないわね」

 いくら蘭子が滅そうともこう次々と来られてはジリ貧だ。

 おそらく、こちらの体力の限界の方が早い。


 「お兄ちゃん!このままだと!」

 普段は一人で行動しているのだろうか、守る戦いには慣れてなさそうで素人目に見てもかなり戦い辛そうだ。

 

 「なんか俺に出来ることは無いか!」

 「少し黙っててくれるかしら!」

 蘭子の顔には汗が滲む。

 「ねぇ!少しだけ蘭子さんを任せていい?」

 桜夜がこちらに視線をやることなくそう言う。

 

 「任せるって?」

 

 「このままじゃ先にこっちが限界来ちゃう!それなら一か八か!」

 桜夜には何か考えがあるみたいだ。

 

 「何を勝手に!大人しくしてなさい!」

 蘭子が吠える。

 

 どうするべきか……。

 

 「私を信じて!」

 くっ……。妹にそんなこと言われたら!

 

 「俺を誰だと思ってやがる!お兄ちゃんだぞ!」

 桜夜がいる方へ走り出す。

 

 「お願い!」

 阿吽の呼吸で咲夜が宙を舞う。

 

 「神威しんいくん!」

 

 「限界なんてなぁ!妹の為ならいくらでも超えてやるよぉ!!!」

 ガラ空きになった正面から邪鬼が雪崩込なだれこむ。蘭子の背中は俺が守る!

 

 「行くよ!燃える死神の鎌フレイムデスサイズ!」

 桜夜が構えると大鎌デスサイズがひときは熱く光る。

 

 「邪鬼滅炎斬キリングジョーカー

 桜夜が放った技は辺り一面の邪鬼を一掃する程の威力だった。器用に空中で回転しながら放つそれは俺たちの周りを取り囲んでいた邪鬼をことごとく消し去ってしまった。

 

「やったな!」

「まだよ神威君!油断しないで!」

 蘭子に言われ周りを見る。

派手に燃えていた炎が落ち着くと、確かにまだ桜夜の技から逃れた奴らがいた。

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