最終話 君を愛した僕
結局、ほとんど変わらなかった。まるで、この五日間がいつも通りであったかのように。たった三日間だ。でも、もう彼女は、僕は、言いたいことを言えて、やりたいことをやって、そうやって日々を過ごす、そんな関係ではなくなってしまった。誰もが思ういつも通りの中に、完全な、圧倒的な、違いがある。こうはなりたくなかった。特別でありたかった。でも、今の僕がそれを願うのは、間違っている。あの時、涙が出てしまったのは、きっと、僕の本心が欲張ったのだろう。だから優しい彼女は、僕のために、日常を演じているのだろう。まるで、友達と話すように。ああ、僕は、いつまで間違い続けるのだろう。わかっているのに、彼女を苦しめることはわかっているのに、まだ、彼女の優しさに、縋りたくなってしまう。だから認めよう。歪みに歪んだ者だけど、嘘に嘘を重ねた偽物だけど、過去に美化された思い出だけど、それでも、確かに、君を愛した僕がいたのだから。
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