第16話 あの時と

 少し散歩でもしようか。僕は、昔から、夜の散歩が好きだった。でも、あの頃は夜遅いから、危ないからって。でも、だからこそ、僕にとって、これは特別なのだ。最初は、中学校に入ったばかりの時だった。特に何か大きなことがあった訳じゃなかったけど、なんか、もう、色々と溜まりに溜まってて、それで、いつの間にか、こっそり抜け出していた。よく覚えてないけど、あの時は、それだけで、すっきりした。どうしたんだっけ、適当に歩いて、知らない道に出て、なのに、不安よりも、なんか、こういうのいいなって、思っちゃって、でも、次第に足も動かなくなって、帰り道もわかんなくって、それで、休憩がてら、この公園に、きて、そしたら、そこに、

「なんか、久しぶりだね」

ああ、なんで、なんで。そこにはまるで、あの時のように、彼女が立っていた。ああ、でも、僕に笑いかけるその笑顔は、もう、あの時とは違っていた。

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