第15話 「嘘つき」
「ごめんね、もう帰るね」
時計はとっくに八時を過ぎている。何も言えず、何も言い返せず、ただ、少しだけ、彼女の言葉に僕の何かが突き動かされた気がした。突き動かされたと思おうとしていた。
「まあ、とはいえ、多分、最終的にはどうにもならないからさ、まあ、全部諦めたら、声かけて、愚痴ぐらい聞けるから。じゃあ」
玄関まで行き、靴を履きを得ると、彼女は、付け加えるように、そう言った。
「まあ、そのうちな」
何も返さないわけにもいかず、反射的に答える。彼女は何を考えていたのだろう、何を思っていたのだろう。
「」
そんなことを考えていた僕には、彼女がなんと言ったのか、聞き取ることはできなかった。でも、その表情は確かに少し悲しそうだったような気がした。僕には、それを聞き返す勇気はなかった。
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