第6話 関係ないから

 うるさい。うるさいな。さっき起きたばっかりじゃないか。今度は耳元で、しっかりと鳴っているのが聞こえる。存在もしない振動さえ、体全身で感じ取れてしまう。たしか、こんなんだったかな。ずっと、彼女がいないと、僕は何もできなかったっけ。ああ、もう、本当に、うるさい。こっちは疲れてるんだ。ちょっとくらい、休ませてくれ。どうせ学校か、親か、その辺が心配かなんかって言って、電話してきたんだろう。はは、親、親ね。俺が電話に出なかったら、そのうち向こうにも電話行くのかな。そしたら、流石に、いや、もう俺には関係ない。だって彼女にとって俺は、必要ないんだから。ああ、違う、これも違う。必要ないんじゃないな、いない必要があるんだ。でも、もう、僕には。迷惑になる、電話、取らなきゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る