第4話 僕にも僕は必要ない

 特に何かを意識したわけではない。今までずっと、彼女にあった視線は、ぐるぐると回る針に向いていた。長い針と、短い針が、何回も、何回も、回っている。そしたらその針が、真上に、綺麗に重なった。よくわからないけど、なんだかつい感動して、涙が出た。なんだろう、何に泣いてるんだろう、なんで泣いてるんだろう。何もわからないまま涙を拭うこともなく、僕は電気を消した。さっきまで確かに明るかった部屋が真っ暗闇になった。何も見えないまま、雑に、適当に、歩いていき、僕はソファーに寝っ転がった。途中、なんか色々落ちたような、色々壊れたような、音がしたけど、もう動く気にはなれなかった。そのまま、少しづつ、意識が消えていく。僕の意識が消えていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る