心のケロイド

ひりつくような痛み

心のケロイド

言葉の割れた破片は

無数に尖って

いまだに胸に刺さったまま



何故、夫の初七日も過ぎぬうちに


(オトウトガ ツトメサキノオカネヲ ツカイコンデ)

(ヤクザカラ シャッキンシテ オワレテルカラ)

(オカネヲ カシテ クレナイカシラ)


それが尋ねてきた用件ですか、お義母さん。


(ドウシテ カセナイノ?)

(チャント マイツキ カエスカラ)

(タイショクキンガ ハイッタデショウ)


無理です。ウチにはまだ幼い三人の息子がいるんですよ。


足音荒く、戸を乱暴に音を立てて閉めて帰った義母を呆然として見送る。

使い込み……ヤクザから借金……それ何?どこの世界のハナシ?


とにかく四十九日までは

それだけを呪文のように繰り返し。


四十九日の法要の日

顔を合わせても無視


(コレ、ウチノブンノ オゼンダイ )


剥き出しの一万円札を強引に渡される。

受け取れませんと返そうとすると逆ギレ。


(ヨメナノニ、シツレイダ)

(コマッテイルノニ、オカネモカソウトシナイ)


まだ、それ言うんですか

この四十九日の法要の場で

幼い子どもたちもいるのに


正座をして頭を下げて言った


「長い間お世話になりましたが、これで二度とお会いすることもないでしょう。不出来な嫁で申し訳ございませんでした」


一世一代の啖呵を切って、子どもたちの手をひいて、わたしは

お寺を後にした。



あれから、20年以上が過ぎた。


それからのアチラ様がどうなったのかは知らない。


こんな雨の日には

ジクジクと疼く。


捨てたいのに

絡みついて消えない。

そんな昔の悪夢きおくがある。

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