心のケロイド
ひりつくような痛み
心のケロイド
言葉の割れた破片は
無数に尖って
いまだに胸に刺さったまま
◆
何故、夫の初七日も過ぎぬうちに
(オトウトガ ツトメサキノオカネヲ ツカイコンデ)
(ヤクザカラ シャッキンシテ オワレテルカラ)
(オカネヲ カシテ クレナイカシラ)
それが尋ねてきた用件ですか、お義母さん。
(ドウシテ カセナイノ?)
(チャント マイツキ カエスカラ)
(タイショクキンガ ハイッタデショウ)
無理です。ウチにはまだ幼い三人の息子がいるんですよ。
足音荒く、戸を乱暴に音を立てて閉めて帰った義母を呆然として見送る。
使い込み……ヤクザから借金……それ何?どこの世界のハナシ?
とにかく四十九日までは
それだけを呪文のように繰り返し。
四十九日の法要の日
顔を合わせても無視
(コレ、ウチノブンノ オゼンダイ )
剥き出しの一万円札を強引に渡される。
受け取れませんと返そうとすると逆ギレ。
(ヨメナノニ、シツレイダ)
(コマッテイルノニ、オカネモカソウトシナイ)
まだ、それ言うんですか
この四十九日の法要の場で
幼い子どもたちもいるのに
正座をして頭を下げて言った
「長い間お世話になりましたが、これで二度とお会いすることもないでしょう。不出来な嫁で申し訳ございませんでした」
一世一代の啖呵を切って、子どもたちの手をひいて、わたしは
お寺を後にした。
◆
あれから、20年以上が過ぎた。
それからのアチラ様がどうなったのかは知らない。
こんな雨の日には
ジクジクと疼く。
捨てたいのに
絡みついて消えない。
そんな昔の
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