外の世界へ!

─────とりあえず、休むことはできた。一旦ステータスだけ把握しておく。




─────

[名称]あなた

[種族]〈マミーラット〉

[ランク]F

[LV] 1/15

[体力]18/18

[魔力]14/14

[物攻] 7

[物防] 5

[魔攻] 11

[魔防] 8

[素早] 13


《スキル》

[噛みつき.Lv2][斬りつけ.LV2]


《耐性.特性スキル》

[毒耐性.Lv1][衝撃耐性.LV2][飢餓耐性.LV-]


《称号》

[変異体][同族嫌悪]

─────



 うん。体力、魔力共に好調だな。穴漏れ日で明るかった外は暗く、深い闇に包まれていることから既に夜であることがわかる。


 私は休息を取りながら一つ、とある考え事をしていた。それはこの家とおさらばすること。外の世界へ踏み出すことだった。



 それが大分危険な選択であることは重々承知しているし、安全面だけ考えれば間違いなくこの名前も知らぬ他人の家の中で籠っていた方が絶対良いまである。なんならここを拠点にして、天井裏スローライフを勝手に営んだっていい。それはそれで結構面白そうだとは正直思った。



 だけどやっぱさ、この世界を見てみたいなとも思った。こんなところでシロアリ貪ってるだけの生活も私らしいっちゃ私らしいけど、ってなんで私の主食がシロアリ固定なんだよおい(ノリツッコミ)。


 と、に、か、く!美味しいものだって食べたいし、折角のネズミ生だ、貧相な生まれでも派手に暴れたいというのがなによりの本音だ。広い世界の中で今の私は井の中の蛙どころか家の中の母親くらいの強さしかない。シロアリや生き残ってる可能性があるハウスラットのようなランクも付かない魔物じゃもて甘しすぎる。




 でも、一歩。たった一歩この穴を潜り歩むだけで私の知らない世界が広がってると思うと、止まらねえよこんなところでってワクワクして仕方がない。



 ネズミとして生まれたことだけが、本当に不憫でならないけどね。折角なら力が無くともふっつーの人間として生まれたかったなあとは思う。



 それは思うけど、ネズミとしてこれから生きていくことを強いられた以上私が泣き言いったって変わりはしないんだ。



 それにさ、私のことをネズミなんかにしやがったヤツに一回だけでもいいから吠え面かかせてやりたい、ネズミとして戦って、生き延びて、成り上がってやるという向上心というか最早復讐心ってのが心の奥底から湧いてきてんのよ。





 面白くなってきたじゃん。スローライフなんて私の実力が付いてきて腰が落ち着いた時でいい。それまでは汚ならしく泥でも唾液でもなんでも被って地面を這ってやるのもいい。でもそれは敗走ではない。私が一歩一歩強くなるステップアップ、階段のようなもんだ。






...マザーとの命のやり取りで大分、心が荒んできたな私。





 私は深い闇が広がる、マザーの開けた穴へと向かう。その穴から顔を覗かせるが、一寸先は闇というか何も見えなかった。


 正直あれこれ言って来たけど、ぶっちゃけ怖い。私のこれからのネズミとして生きていく上での、沢山の障壁と絶望が入り雑じった長く険しい道のりのようでもある。



 ここを潜れば、この家でのスローライフ道は潰える。この穴は天井裏、建物の大分高いところに位置しているから戻れないのだ。一戸建て、一軒家くらいの高さだったとしても、私のハイジャンプではここまで届かないだろう。もとよりこの天井裏まで戻ってこれたのも、家具がいい具合に階段状に並んでいたからである。




 でも、絶望や不安よりワクワクが勝っている。生まれた時から悠々自適なスローライフなんて、あまりにも楽をしすぎだろ。




 私は不安を押し止めてマザーの開けた穴から身体を出して前へと進んだ。




─────勿論、この穴は外から見れば鳥の巣穴みたいに空中にあることになる。身体の半分が穴から出たところで、私は地面へとまっ逆さまだった。





 しゅるるるる、おっと。地面が草の絨毯になっていたのと、ある程度こうなることを予知していたことからダメージは無く着地することができた。




 外は大分暗いが、日の出が近いのか空はやや青くなっていた。私は日の出を待っていられ無い程に心臓を鼓動させて宛もなく草原へと走り出す。






 これが正真正銘、私のネズミ生のスタートだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る