第2話 保健室での生き様

 キーンコーンカーンコーン。

 チャイムが鳴り響く学校に、私は閉じ込められている。鳥は歌いながら、自由に羽ばたいているのに。 雲はマイペースに私達を包み込んでいるのに。私は自由になれない。

なぜか?そんなの分からない。今はもう泣きそうで仕方なくて。保健室に向かっている。保健室に行けば、私のことを理解してくれる人がいる。そう、信じていた。でも現実はそう甘くないみたい。

「誰も、いない。」

私の独り言が暗い部屋の冷たい床にポトンと落ちる。

 長々とごめんなさい。私は漆原想花。この綾恵中の1年生。今年の春入学してきて、もうすぐ世の中がクリスマスで浮かれはじめる頃。私はなんとなく学校に行くのがきつくなってきた。理由なんて説明できない。人の心なんてこの世の何よりも抽象的で言葉にしづらい。言葉という道具を使っても心というのは手強い。自分の気持さえも、表現ができないのだから。でも、原因はなんとなくわかる。綾恵中は、近くに綾恵小学校、綾恵高校がある。綾恵小学校である程度グループができたまま、進級してきたから、少数派の小学校から来た人たちは溶け込みづらいの。もちろんコミュ力の高い人たちはいいよ。でも私は引っ込み思案。友達なんて全くできなくて、もう本が友達って感じ。それですごストレスが溜まって、、、何したと思う?



腕を傷つけたの。

リストカット。通称リスカ。刃物(カッターナイフ、カミソリ、画鋲、最悪の場合包丁)

で自分の腕を傷つけることを指す。


それがバレちゃって。保健室の先生って目ざといね。やめなさいって言われた。その代わり保健室に来ていいから、とも。

私には何がいけないのかわからない。

私にとって腕を傷つけるのは、生きてるって思える、生きてていいって教えてくれる、そんな存在。つまり、心の拠り所なんだよ。それを辞めてって言われたから少しムカついたけど私のことを思ってくれる人がいるって思うと少し嬉しかった。

 でもそれで私の心が軽くなるとは限らない。むしろ重くなる一方。

 

 最近私は思う。消えたいと。


 死にたくない。消えたいの。死ぬって怖くない?人生の最期の儀式。簡単に届きそうな扉だけど、簡単に開けない。でも、消えるっていなくなるってこと。存在を無くすることができる。便利だと思わない?だから消えたいの。私は誰からも必要とされていないし、むしろ邪魔だと思われているんじゃないかなとよく思う。だったら消えたほうがいいと思う。

そんなことないって思う?

それは偽善だね。

だってそうでしょう。誰からも必要とされてない=要らない。

立派な式だと思わない?




あぁ。消えたいな。生きていて楽しいことなんか一つもない。つらいだけなんか望んでいないのに。「自殺」って調べると、ヘルプが必要とか、必ずあなたの力になるとか、口だけの乾いた文字が画面に広がる。




あぁ。自由になりたい。今が自由なのかそうでないのか。それはおとなになってからじゃないとわからないと思う。歳を重ね、経験を重ねてから振り返る過去は自由だったのか。それを考える日が来るのだろうか。それまで私ら生きているのだろうか。でもこれだけは言える。私は閉じ込められている。自由と言う名の檻に。













こんなふうに思う私はやっぱりだめな人間なのだろうか。

やっぱり要らない人間なのだろうか。

最後に。願わくば一人にでも必要とされる命に生まれ変わることができれば、、、












_____さようなら。













〜end〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

∀なんて存在しない 天音❦ @kentauri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ