第2話 情報収集

メイナード家はイヴァーリアス帝国の東部の辺境に位置する男爵家でそれなりの歴史を持つ貴族である。

帝国の貴族階級には皇帝をトップに

公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵の6つに分かれている。そして同じ貴族でも法衣貴族という貴族が存在する。法衣貴族は領地を持たない一代限りの貴族で帝都で働く高位官僚に与えられる爵位である。法衣貴族が帝都で働くのに対して領地を持っている我々メイナード男爵家のような貴族は地方で統治を行うので地方貴族と呼ばれている。


周辺国家の情報。

イヴァーリアス帝国の北には魔獣が跋扈するオルガ大山脈、南には獣人国家ガルフと小国ラオス国、東部には帝国と同等の規模であるファーレンス王国、西部には大国アルオニア王国が存在する。友好国は南部のラオス王国だけで他とは戦争を繰り返している。昔は小規模な国も存在していたが帝国や他の国が侵略を繰り返すうちにそれなりの大きさの国しか残っていないような状況である。


そして魔術。魔術とは魔術陣に魔力を流す事で発動する摩訶不思議な現象のことだ。基本的には俺たち日本人が考えるような魔法と同じようなものだが、適当に詠唱を唱えたりイメージしたりして発動するのではなく、あくまで一定のルールにのっとった学問に近いモノという感じである。

魔術には第一位階から第十位階までの10段階のレベルがあり数字が大きくなるに連れて高難易度の魔術となる。位階の数字は発動する魔術の魔術陣の主環の数を表している。

一般的に魔術陣は環と呼ばれる円状の陣に数多くの魔術を発動するための情報が詰め込まれているので主環の数が増えるに連れて魔術の規模や難易度が一気に跳ね上がる。一般に第四位階魔術を使えればエリートと呼ばれ、この広い帝国でも第七位階魔術を使える魔術師は数えるほどしかいないらしい。



メイナード家は貴族の中ではかなり貧乏な家だが、一応最低限の本が揃っていたのである程度の情報は集める事ができた。手に入れた情報を元にこれからの身の振り方を考えた。


まず、地方の貧乏下級貴族でも長男が跡取り、次男はスペアとして最低限の学校に通わせる。メイナード家も長兄、次兄の2人とも帝国東部最大の都市の学校に通っている。そして三男以降は使い道がないので放置される。村に残って家を手伝うか、都市に行って軍人、役人、商人として働く事になるだろう。


そして俺のこの世界での野望。

決して王になりたいといった馬鹿げた夢を持っている訳ではない。前世から貧しかった幼少期の反動がからか、俺は金と権力にしか目がなかった。結局、今世でも金と権力を欲している自分がいる。だから欲望に素直に生きたい。せっかく二度目の人生だ。今度こそ登り詰められるところまで行ってみたい。



となると俺の進むべき道は魔術師か軍人となる。魔術師は実力さえあれば平民ですら貴族階級になれる。そして軍人は功績さえ上がれば出世できる。実際に今の元帥の1人は元奴隷ながら数々の戦争を経て元帥にまでなった伝説的な人物である。

個人的には異世界に来たのだから魔術師になりたいが一流の魔術師になるには高名な魔術師に弟子入りするか帝都の帝国魔術学院に通うかの2択になる。帝国魔術学院は帝国最高峰の魔術師育成機関で卒業したら中央の官僚としてのエリート街道は確約されたといっても過言ではない。


そして残念ながら俺の魔術適性はそれほど高くないと思われる。と言うのも、魔術適性は大きく遺伝に依る事が分かっている。そのため高位貴族が圧倒的に適性が高い事が多い。

メイナード家はそれなりに歴史があるので魔術が全く使えないと言う事はないだろうが過去に腕の立つ魔術師がいたことはない。

祖父がちょっと名の知れた魔術兵だったくらいだろう。

となると俺は祖父と同じく軍に入り魔術兵として働くしか道はない。

幸い、常にどこかの国と戦争をしているのですぐに出世するチャンスは転がっている。

後は戦場で生き残り続ける術を身につけるしかない。

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