異世界転生したから帝国軍人として成り上がる
@tree-cats
第1話 転生
背中に軽くぶつかられた程度の衝撃を感じた。こんな人通りの少ない夜道でぶつかってくる人間に苛立ちを覚えた俺はぶつかった奴を確認しようと振り返ろうとする。
しかし、腎臓のあたりだろうか、急激に熱い感覚に襲われる。2、3歩よろけながら前に進むと急に足の力が抜けた。
そして崩れるようにして前のめりに膝から倒れた。力が入らない俺は肩を掴まれて無理矢理仰向けにされた。
するとフードを深く被った男が高く掲げた右手に銀色に光る何かを持って勢いよく振り下ろした。胸に激痛が走った。
そこで初めて俺は包丁のような刃物で刺された事を認識した。そして胸を何度も刃物で刺された。
意識が遠のく中、なんとか犯人の顔を見ようと相手の服を掴んで手繰り寄せる。
あぁ、お前か
そう思いながら俺の意識は無くなった。
どれほどの時間が経ったのだろうか。永遠とも一瞬とも思える不思議な時間を暗闇で過ごした。
眩しい光が視界に入ってくる。そして目を開くと激しい頭痛に襲われて思わず叫んでしまった。
「レオン様、大丈夫ですか!」
激しい頭痛に襲われて言語として認識されないような俺の叫び声を聞いて誰かがやって来る。
激しく開かれたドアから金髪少女が駆け寄って来る。外国人のような顔立ちだ。
「奥様、レオン様がお目覚めになりました!」
あれほど痛かった頭も嘘だったかのようにおさまってきた。そして冷静になった俺は気づいた。俺はもう既に一回死んでいるという事に。
そんな事を考えていると廊下からドタドタと大きい足音を立ててひとりの女性がやって来た。
「もうっ、心配したのよレオン」
そう言って俺を優しく抱きしめたのは俺の母親だ。その豊満な胸が俺の顔に直撃して息ができない。
「奥様、怪我人ですから優しくしてください」
「あら、忘れていたわ。ごめんねレオン」
抱きしめていた俺を離すと頭をポンポンとした。
「今度からは気を付けるのよ」
「はい、母さん」
俺の返事に納得したのか、母さんはニッコリとして部屋を出て行った。
ドアが閉まって俺1人になると俺は作った笑み崩して冷酷な顔に戻る。眩しい光に鮮明な感覚、夢にしては鮮明すぎる。どうやら夢ではないようだ。どうやら俺は生まれ変わったらしい。しかも地球ではないどこか異世界に。
俺は東京の大企業に勤めていた鮫島涼太、34歳だった。貧しい家庭で育った俺は奨学金を借りながらも国内トップな超エリート大学を卒業し世界的にも有名な大企業に就職した。会社でも優秀な成績を残した俺は30代にして人事部の部長にまで登り詰め、後少しで役員への出世も射程圏内のところまで来ていた。
小さい頃はその貧乏さから金を稼ぐ事に固執していたが、世間的にも超有名な企業に入った俺は金はもちろんのこと、権力を求めて出世を貪欲に求めた。
だから俺は出世のためならなんでもやった。上司の機嫌取りから同僚の不正をでっち上げまで様々なことに手を染めた。
そんな良心のかけらもなかった俺は人事部で無能な社員を精神的に追い詰め退職させ続けた。そのおかげか大幅な人員削減が会社に認められてスピード出世をした。
しかし出世の代償は自分の命とあまりにも大きいものだった。俺は3年前に退職に追い込んだ元社員に夜道を襲われ滅多刺しにされて死んでしまった。もちろん、人の恨みを数多く買っていた俺は警戒を怠らなかった。最近は自ら手を汚すというより管理業務が多くなり人から恨まれるようなことはしていなかった。だから油断していたのだろう。
俺は自分のやってきた事の報いを受けて死んでいった。
そして俺は異世界に転生した。正確には意識を乗っ取ったような状態である。この体の元の持ち主が死んだのか、それとも転生した俺が記憶を取り戻したのかは定かではないが、この体は34歳の鮫島涼太が動かしている。
もちろん、今までのレオンとしての記憶も残っている。レオンはメイナード男爵家の三男の5歳である。
家族構成は
祖父 アルフォンス・メイナード
父 ロイ・メイナード
母 トリア・メイナード
長男 レイ・メイナード
次男 レスター・メイナード
三男 レオン・メイナード(俺)
長女 ナリア・メイナード
の7人家族だ。しかし家に居るのは祖父と母、そして俺の3人だけで父は軍人として少し離れた砦で働いていて、長男、次男は少し遠くの都市の学校に通っている。長女は寄親の家族家でメイドとしての勉強に励んでいるといった状況である。
まずはレオンの中身が鮫島涼太である事がバレないようにしなければいけない。レオンの記憶によるとここは魔術が存在する異世界で文明レベルは中世ヨーロッパである。となると忌み子や魔女狩りのような野蛮な文化が残っている可能性も多いにある。せっかく新たな生を受けたのにすぐ死ぬのは遠慮したい。
直近の目標は情報を収集することに決定した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます