第4話 魔王との接触

 「わるい、カエデ。俺は君とは行けないよ」

 「えっ……なんで?」

 「俺たちはさ……もう……全部諦めてるんだよ。……ほら」


 そう言って、カイトは村の商店街の方へと指差した。その通りに俺は商店街を見てみた。


 「なにもおかしくないけど?」

 「よく見てみろよ」


 ……たしかに、じっと見ていると、少し違和感を感じた。

 村人たちの目から、光が消えていた。全員、死んだ目をしていた。


 「もしかして……」

 「この村は数年前、魔王軍の幹部に襲撃を受けたんだ。それによって、村人のほとんどは死んでしまった。それに、当時の弓の勇者も………」

 「そんな……」


 数年前、村には、魔王軍の幹部と名乗る人物が現れた。その人物は大量の魔物を使って村人たちを襲い、本人は当時の弓の勇者と対決した。結果、弓の勇者は敗れ、村も壊滅的な被害を受けた。そして、村人たちは希望を失い、みな全てを諦めているという。


 「やつの力はかなりエリートの冒険者の力すらもはるかに越える。普通に挑んでも勝てるわけがないんだ。でも、その普通じゃない方法が……君が勇者じゃないと分かった今、希望なんて、もてるはずもない」


 カイトは、そうハッキリ言って去ってしまった。


――――――――――――――――


 カイトと別れてから、俺は村を探索していた。カイトに言われてからようやく気がついたのだが、村の人たちの目には、全員光がなかった。どこに行っても、楽しそうにしゃべっている雰囲気はある。しかし、音はしない=喋っていない。


 「全てに絶望した村……か」


 もし、弓の勇者が見つかれば、この村にとってそれ以上の希望となるものはないだろう。


 と、そんなことを考えていると……


 「――あら?あんたは剣の勇者と一緒にいた……」

 「ん?」


 どこか聞き覚えのある声で話しかけられた。


 「ふーん。こっちの世界にきたのか。剣の勇者も恐らく一緒」

 「いったい、なんのようですか?」


 みたところ女だ。格好はそこまで派手ではないが、赤く光る目が特徴的な人物だ。腰には、赤と緑、2つの宝石をぶら下げている。


 顔をみても、俺はこの顔を知らない。声はどこかで聞いたことがある気がするのだが。


 「……勇者の仲間は……消しておかないとね♪」

 「はっ?」


 その瞬間!女の後ろから大量のつるが伸びて襲ってきた!そして、俺も含めて周辺の建物を次々に破壊していった!


 「いきなりなにするんだよ!」

 「君、勇者の仲間でしょ?だから、ここで倒させてもらうよ」

 「おまえ……魔王軍の仲間か?!」

 「仲間……そう、あたしは魔王軍の仲間よ。でも、本当にそれで良いのかしら?」


 何を言っているんだ?魔王軍の仲間、でもそうじゃないような人……ってことはこいつ、まさか?!


 「あたしの名前はロベリア・ジュエリー。あたしが魔王よ」

 「魔王……ロベリア……なぜここにいる?!」

 「言うわけないでしょ?」

 「だったら、力ずくでも聞き出してやる!」


 そして、俺は魔法剣をとりだし、ロベリアに向かっていった。

 魔王ロベリア・ジュエリーを倒せば、俺の復讐は果たせないけど、とりあえず事件は解決できる。アトラスの前に、まずはおまえから……!!


 ――と、思ったのだが……


 「遅い」


 ボソリと呟き、ロベリアは手を左に払った。すると、地面の砂粒が浮き上がり、葉っぱへと姿を変えた。

 さらに、葉っぱは俺の方へとものすごい速さで突っ込んできた!


 「のわぁぁ!!」


 大量の葉っぱに巻き込まれた俺の体は、全身に細い切り傷が大量についていた。


 「くっそぉ……」

 「ふふ……もういいでしょ」


 そう言い残して、ロベリアは立ち去ろうとした。


 「待て!」

 「何か?そんな体で何ができるの?」


 アトラスやシュネムらの事件が全て繋がっているのなら、この魔王ロベリアが主犯に違いない。だから、なんとしてでもここで食い止めたいのだが……


 「全身が痛いでしょ?それじゃなにもできない。あたしはもう行くね」


 そんなわけ……!!と、攻めようとしたが、全身の切り傷がかなり深く、とても動けそうにはなかった。


 傷の具合をみて再び顔を上げると、もうロベリアはそこにいなかった。


 何もできなかった……それどころか、一撃を食らっただけでダウンを取られてしまった。あいつの力は桁違い。いったい、やつをどう攻略できるんだ……??


 「とか考えてる場合じゃねぇ!あいつ、どこ行きやがった!!」


 今さら気づき、俺は場所を変えて、ロベリアの捜索を始めようとしたが、全身の傷のおかげで続けることはできそうになかった。あいつ、魔法かなんかで傷の治りを遅くしているようで、俺のスキルでも消すことはできなかった。


 しかたなく俺は、村の宿に泊めてもらうことにした。宿の人は目に光はないものの、仕事はしっかりとしており、何一つとして手抜きのものはなかった。


 やっぱり、村人は本当に全てを諦めているのか…?そして、ロベリアは何を目的にここに来ているんだ?そんな疑問が浮かび、今夜はほとんど寝ることができなかった。

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