異世界復讐記【３つの世界を同時に救え！】

第8話 勇者パーティの最後

　「グハッ…！！」

　「ライトーー！！」

　「あははっ♪隙だらけだから殺しちゃった♪」

　どうなってる？？ミアは僕たちのパーティメンバーのはずなのに。

　「混乱中かい？勇者よ」

　「はっ？！」

　アトラスの声が背後から聞こえたから、咄嗟に剣を振ってしまった。しかし、やはりだれもいない。

　「ミアはなぁ、」　　　　　　「君たちの」

　　　「仲間だったしなぁ。」

　　　　　　　　　　　　　「でもよぉ、」

　　　　「あいつが、」

「あの騎士を、」　　　　　　　「殺したなぁ。」

　「うわぁぁぁ！！！」

　アトラスの声が、360°あちらこちらが聞こえてくる。気持ち悪すぎる。そのうえ、声の位置が変わるたびに火の玉やら矢やらが飛んでくるが、まともに避けることができない。

　「やめろ！勇者の力、【突風乱撃】」

　こちらも360°全方位に突風剣を放つ、突風乱撃を使って対応した。

　「おっと、危ねぇよ……っておい、俺はこっちだぜ？」

　「ライト！おい、大丈夫か？！しっかりしろ！」

　「レイ……俺はもう……無理そうだ……」

　「ミア！なんでこんなことを？！！」

　俺は、回復をできるアビリティ、【治癒】でライトを治しつつ、ミアに問いかけた。

　「ああ、そういえば言ってなかったね。わたしは最初からこちら側なのよ。あなたがこのパーティに来る前、そう、このパーティができたそのときから」

　「なん……だと……！」

　ミアが言うには、何年か前、このパーティが結成されたとき、ミアはこのパーティに入るつもりではなかった。しかし、自身の力でここに"勇者"がいずれ入っていることが分かったため、ライトたちに頼み込んだのだという。

　――勇者（俺）を倒すために。

　「くっそ！SPが足りなくて回復しきれねぇ！」

　槍が体を貫通している。大きくはないが、穴が空いてしまっている。これでは、ただの回復魔法などでは回復できない。

　「ミア、僕たちとの旅は、そんなに面白くなかったのか！」

　「ええ、面白いどころか、むしろ退屈とすら感じたわ。」

　　ミアは、アトラスの方へ歩み寄って、

　「ねえアトラス。勇者パーティはほぼ全滅したんだし、そろそろ撤退してもいいんじゃない？」

　「4人も殺せれば万々歳か。ロベリアもそれでいいか？」

　「えぇ。それじゃあ勇者パーティのみんな、バイバーイ！」

　ロベリアの言葉を最後に、ロベリアの声がした花は枯れて、ミアはアトラスと一緒に飛んでいってしまった。

　「レイ………俺はもう……むりそうだ」

　「おいライト、なに諦めてんだよ！」

　「これ程の傷……特に難しいとされる回復魔法の最上級、蘇生治癒魔法でないと、治せないんだ。」

　「なんだよ……それ」

　蘇生治癒魔法とは、対象が死んでいない限りはあらゆる傷を治すことが可能な魔法である。と、後から調べたら分かった。

　「なぁ、レイ。あんたはミアのこと、どう思ってたんだ？」

　「ふぇ？」

　いきなり何の話だよ！

　「いや……死ぬ前に少し話したくてな。俺は……パーティメンバーとして……好きだったよ。レイは？」

　「あんな奴だって分かった後だけどさ、ミアが今までに見せてきた顔は全部、本心だったと思う。僕は、ミアはここに帰ってくるって……信じてるよ。」

　「そうか、それじゃあ……な………」

　それをもって、ライトから命の灯火は消えてしまった。僕に、ライトの言う蘇生治癒魔法が使えたら、ライトは生きていたかもしれないのに。

　魔王、ロベリア・ジュエリー……僕は絶対におまえを許さない。仲間はもう全員死んでしまった。でも、諦めるものか。

　アトラスとロベリア、お前ら２人は必ずや僕の手で地獄へ送ってやる………！！

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　場面は変わって上空の飛行中の2人だ。アトラスの手にある小さな花は、魔王城のロベリアに繋がっている。

　「アトラス、勇者はまだ殺してないけど良いの？」

　「問題ないさ。あそこまで痛めつければ、もう反抗の意志すら消え失せただろう」

　アトラスは、不適な笑みを浮かべて答えた。それに対してロベリアは、

　「でも～、ああいう人たちって友情とか絆とか言ってまた復活してくるもんじゃない？」

　「長年付き合ってきたパーティの１人が裏切ったんだ。もう、誰も信用などできるものか。それよりミア、なにか成果はあるよな？」

　「えぇ。後で伝えるわね」

　しばらくの後、飛行を続ける二人の前に、巨大な建物が見えた。

　パッと見は洋風の城。しかし、それは石や木材などで作られた城を、蔓に覆われていることが分かる。

　「相変わらず不気味な城ね」

　「言うな。ロベリアに怒られるぞ」

　アトラスとミアが城の中へと入ると、すぐに玉座の間へと繋がり、奥にある大きな椅子には、足を組んで、背もたれにガッツリよしかかって座る、赤と緑を基調とした、ロリータ風ドレスの少女がいた。

　「やぁ、アトラスたんとミアちゃん。帰ったんだね」

　「……あぁ。おまえの絡みは無視して、報告会をするぞ。まずはミアだ。分かる限りの勇者パーティの情報を教えてくれ」

　「分かったって、教えてもいいけど、もう殆ど死んでしまった人たちの事を聞く必要ある？」

　「あの４人の事はいいから、勇者レイ・キムラのことを教えなさい。」

　若干キレ気味なロベリアを無視してミアは説明を始めた。

　零が異世界から召喚されたこと、『アビリティ』という、特殊な力を使えること、などなど……

　「あともうひとつ、彼らとは関係ないんだけれど、重大なことが判明したの」

　「何？！」

　「それは……」