第7話 勇者の力
「勇者の……力」
わずかな希望を書けて探したヘルプには、"勇者の力"と書かれた項目があった。
・勇者の力
異世界に召喚された勇者には、特有の力が備わっている。これを、『アビリティ』と呼ぶ。アビリティは一定量のSPを消費することで獲得でき、同じ量のSPを再び消費することで、使用できる。
「これなら……!!」
獲得可能なアビリティの一覧を大急ぎで確認していった。その間にも、ライトとアトラスの戦闘音が聞こえてきて、ますます焦らされた。
そして見つけたのが、これだ。
「よし、ライト!こっちにおびきだして!」
「了解!任せたぞ!」
ライトはアトラスの攻撃の回避をやめ、こちらへと走ってきた。それに続いてアトラスもまた、空を飛んでこちらに向かってくる。
「ん?勇者の雰囲気が変わった。ってことは、奴のあれが消えたか。まぁ、いい。受けてやろう!」
「後悔するなよ、アトラス!発動、勇者の力!【
剣を腰の鞘に差し直し、アビリティ名を叫ぶ。すると、僕の体がひとりでに浮かび上がり、ものすごい速度でアトラスの周りを移動し始めた。同時に、僕は剣を抜いてアトラスに何度も何度も斬撃をくらわせていった。
「ぐっ……なかなかの攻撃力だ」
「やった!結構削ったぞ!」
これまでほとんどアトラスに対してダメージを与えられなかったが、ついに、大ダメージを与えることに成功した。
「このまま行く!発動、勇者の力!【飛空乱斬撃】【
飛空乱斬撃を終えて、着地と同時に、次の技を発動させた。【突風剣】一撃で巨大なダメージを与えつつ、強烈な風で対象を吹き飛ばす技だ。
「ぬおっ!」
飛空乱斬撃で空中の奴に近づき、落ちてきたところを突風剣で吹き飛ばす。これによって、順調にアトラスのHPを削っていき、残りは4割程になった。
すごい。SPを大量に消費するが、このまま決める勢いなので関係ない。
「おい!こいつのこと、忘れてないかい?」
「あっ!ミア!」
そうだ。アトラスの野郎、ミアを人質にしてるんだった。って、ん?さっきまではアトラスの後ろから蔓が生えていてミアが巻き付けられていたはずだが、蔓がなくなっている。
「ちっ、貴様ぁ!」
「レイ!ミアのことは安心しろ!このまま決めてやれ!」
見ると、ライトがアトラスの背後に回り込み、ミアを蔓から解放して、抱えて逃げているところだ。
「ああ!行くぞ!」
長期戦になるとSP不足で不利な状況になりかねない。残りの4割を一撃で仕留める技を探す。そして、見つけた。これならやれる。
「小賢しい。死ねやぁぁ!!」
アトラスが叫ぶと同時に、大量の稲妻、火の玉、水の玉、風の刃、その他諸々を一斉にでたらめに放出し始めた。
これほどの数を奴が一気に放出したのは初めてだ。先ほどまでの余裕が、そうでなくなっているらしい。
ただ、僕も楽には行かない。それだけの数の技を放出しているのだ。これでは避けるのに手一杯で攻撃できない。かといって、ダメージ覚悟で突っ込めるようなHPは残っていない。
なら……
「威力は落ちるが……発動、勇者の力!【
自身の移動速度をあげるという単純なアビリティだが、ここでは大活躍間違いなしだ。
「速い!」
「よし!一気に決める!」
機関車並みの速さでアトラスの出す大量の属性弾を回避していき、その懐に飛び込んだ。
「いつのまに……」
「今までの罪、償え!発動、勇者の力!【
英雄の剣……基礎消費SPに加えて、さらにSPを消費することで、その威力が消費すればするほど上昇していく。その値に上限はない。つまり、SPの最大値が上がれば、英雄の剣の威力の最大値も上昇していく。
虹色に輝く剣を、全力を込めてアトラスの体に振り下ろす!飛空乱斬撃などでSPを消費していたから、威力は今の最高の半分くらいだが、それでもかなりの威力が出るはずだ。
そして、剣の刃がアトラスの体に触れる……その瞬間!
……
「あれ?」
アトラスが消えた。アトラスは剣を振られる直前まで、魔法を乱射していた。逃げるような素振りも見せやしなかった。
しかし、そこには何もない。【英雄の剣】による、爆破痕だけだ。
「ライト!アトラスがどこ………か………!!?」
ライトの方を振り返ると、ライトが血を吹いて倒れかけているところだった。その後ろには、手を前に出し、光の矢を放つ……ミアの姿があった。
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