第6話 アトラスの力
「わたしは魔王、ロベリア・ジュエリー。世界の全てを我が物にする者だ」
そんな声が、花から聞こえてきた。
「魔王………」
「おまえが……」
花の奥から話す声は、自身を魔王と言った。
優しそうな女性の声だった。しかし、あくまでも優しそうなのは声だけ。その裏には、邪悪さが満ち溢れていた。
「あなたたち、最近私たちの邪魔をしているそうじゃない?そろそろ迷惑だから、ここで殺しちゃいましょー!アトラスたん、やっちゃって!!」
「"たん"をつけるな」
そう言いながら、アトラスは右手から大量の稲妻を発射してきた。
稲妻は、まるでそれぞれに意思があるように動き、森を焼いていった。
「ほっ、ほいっ」
次々に放たれる稲妻だが、先ほどのような追尾式ではないため、わりと簡単に避けられた。
「はぁぁぁ~~」
次は手に魔力を込めて炎の弾を作り出した。それを上空へ放り投げて、破裂させる!
「なんじゃこりぁ!!!」
破裂した炎は小さな火の玉になって森中に降り注いだ。さらに、着弾点で大爆発を起こし、森の地面を破壊していった。
「よっ」
火の玉を回避しつつ、僕とライトはアトラスに少しずつ近づいていった。今の奴は、左手を空へ掲げているため、隙がある。
あちこちで起きる爆発を避け、アトラスとの距離を一気に詰めた。
「させねぇよ!」
しかし、アトラスもまた黙ってはいない。自身の周りに氷の壁を作り、身を守った。
「ライト!」
「あぁ!」
氷が出てきたからなんだ。そんなものは砕いてしまえばよい話。僕もライトも拳に全力を込めて、アトラスを守る氷の塊をぶん殴った。
バキィン!
「なっ……!!」
氷の塊は、いとも容易く……ではない。
全力の一撃×2で砕け散った。
「「このままっ!」」
僕とライトは声をハモらせて、叫びながら剣を構える。さらに、アトラスの元へと駆け出していった。
剣を振り、奴の体に触れる寸前で、
フッ……
「なっ!」
「消えた……」
奴の姿は忽然と消えてしまった。
「どこだ?!」
姿はもちろん、その気配すら完全に消えた。もしかして、撤退したのか?いや、魔王の声がした花はまだあるから、奴は逃げていない。
って、よーく見ると、あの花のところに人影があるような……
「いたぞ!あの花の上だ!!」
「よし!!」
見つけたからにはもう逃がさない。僕らは花の根本から、極太の蔓をよじ登っていった。
「へぇ、やるやん」
「でもぉ、邪魔だからぁ、消しちゃおっか♪」
ロベリアの言葉をきっかけに、蔓がうねり、さらに成長していった。成長し、伸び続け、広がり、形作り、平らになり、絡み……
終に、上空に巨大な円形となって成長を終えた。
「はぁ……はぁ……」
蔓を上りきった先には、平たく広がり、闘技場のごとく形作られた蔓の円盤があった。そこに、僕とライトは立っている。そして、アトラスと魔王の声がした花もあった。
「追い詰めたぞ……!!」
「覚悟しろ!」
場所は遥か上空、足場は円形に広がった蔓のみ。よって、奴に逃げ場はない。しかし、アトラスは余裕そうな微笑を浮かべて、こちらを見つめている。
「追い詰めた?それはこっちの台詞さ。君らには、俺の本気を味わわせるためにここまで誘いだしたんだよ」
「どういう意味だ?」
奴が使ってきた技に関しては、全て対抗策を考えついた。シンプルな力で挑んできても2人がかりならば、有利に動けるはずだ。これ以上何ができる?
「まぁ、俺の本気、味わってみるか?」
その言葉をきっかけに、アトラスの周りを虹色の光が周り始めた。そしてその光は……
「はぁっ!!」
アトラスの体に飲み込まれていき、爆発音と共に、アトラスに虹色のオーラが現れた。
そのまま、アトラスはさらに上空へと飛び上がった!
「ふははは!!どうだ!ここまでは届くまい!」
「跳んで……いや、飛んでる」
「空中浮遊……そんなことまでもやってのけるのか……」
足元を虹色に光らせ、空中を自在に飛び回っている。
「これでは、剣が届かない……攻撃できない」
「ハハハハ!!そりゃ!!」
手を振り、魔法陣と隕石の魔法を発動させた。
同時に、蔓も伸ばして攻撃してきた。
これは、魔方陣の出現箇所に落ちてくるため、その範囲の外へ行けば良い。蔓は、その場にとどまらなければ捕まることはない。ついでに蔓を切断して追尾を回避した。
「火、土、木の3つ同時攻撃でもダメか。さすがは勇者、ということか」
すると、アトラスは蔓を長く長く伸ばしていった。それはアトラスから見てて前にいる僕を越え、奥にいるライトも越え、さらには蔓のステージすらも越えて下へと降りていった。……ん?下?
「まずい!ウィルたちが危ない!」
「なに?!」
「遅ぇなぁ。ほい、回収完了~っと」
「レイ!ライト!」
「「ミア!」」
下から戻ってきた蔓の先には、ミアが捕まれていた。
「くっそ!放せぇ!」
空を飛んでいるアトラスに向けて全力でジャンプをするが、攻撃をするどころか、触れることすらできない。
ライトも同様のようだ。
「いったいどうすれば?!何か……何かないのか!」
ステータスを確認すると同時に出てくる画面にある、ヘルプを必死に探す。一発逆転を狙えるような、そんなシステムはここにはないのか?!と。
すると、勇者の力、そう書かれた項目を見つけた。
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