第4話 西の村
西の村につくと、驚くべき光景を目にした。
「な…なんだよ、これ……」
「西の村って……ここ…だよね?」
「もしかして、まちがえちゃった?」
「いや、ここで間違いないはずだ。」
勇者パーティのみんなは困惑していた。そこにあるのは"村"であると聞いてきたからだ。しかしそこにあったのは――
「これって……森?」
村があると言われてきた場所、そこにあったのはなんでもない森だった。
訳がわからないまま森の入り口で突っ立っていたが、そこでミアが声をあげた。
「とにかく行こう。きっと……この先が村だから」
ミアの言葉に皆が頷き、6人で森の中へと入っていった。
森を進んでいって数十分が経過するが、いっこうに森がひらける様子はない。それどころか、ますます木々が増していっている。もちろん、村に繋がる様子もない。
「ねぇ、本当にこの道であってるの?」
フィオナが不安な声を上げたとき、変化が起きた。正確には、森の中で人影を見つけた。
「すみません、ここら辺りの村って……!!」
僕がその人に話しかけようとした瞬間!
「ぬぉっ!」
「わっ!」
「きゃっ!」
その人は振り返り、その腕から無数の
「あぁーやっとだ。やっと会えたよ。」
3人をを自身の頭上に固定すると、その男はそう言ってきた。
濃い紫の髪に憎悪に満ちた深紅の目の人物、おそらく、魔王もしくはその手下がそこにいた。黒と赤を中心としたコーディネートはその邪悪さをより一層引き立てている。
「よう、あんた、勇者様で間違いないよな?」
「おまえ、魔王の手下か?」
「質問に答えろ」
「……そうだ。異世界から召喚された勇者、零だ。」
「ほう。じゃ、一応自己紹介しておこうかな。俺の名はアトラス、魔王の手下でまぁ、間違いではないな」
魔王の手下と名乗ったそいつだが、これまでの奴とは全く雰囲気が異なっていた。これまでの奴は、悪魔のような角や羽の生えた奴、竜のような奴、と、異形の生物が多かった。
しかし、目の前のそいつはしっかりと人の形をしている。変わっていると言えば、頭に動物の耳があることと、尾が生えていることだろうか。
「おい!今すぐそいつらを離して、村ももとに戻せ!」
「まさか。そう言われて、はい、わかりました、とか言うわけねーだろ」
魔王の手下…アトラスと名乗ったその人物は、蔓をさらに伸ばして3人の体を持ち上げる。
「こいつらは人質だ。おまえ、これ以上俺らの邪魔するな。断るならこいつらは殺させてもらおう」
「させるかよっ!」
アトラスが話し終わる前に捕まえられていない、ビルが、斧を持ってアトラスの元へ突っ込んでいった!
アトラスは蔓を動かして、フィオナを自身の目の前へと差し出した。すると、ビルは斧を持つ腕を止めるが、そこでアトラスは回転してビルを蹴飛ばした。
「ぐはっ……!!」
「だっせ、仲間が出てきただけでこれかよ」
「仲間を…傷つけられるわけ……!!」
誰だってそうだろう。仲間を人質にとられたならば、よほどでなければその仲間の救出を優先する。
ここで、僕は違和感に気づいた。
これまでに戦ってきた"魔王の手下"というものは、知能こそあれ、そこまで高くない。作戦なんて考えずに突っ込んでくる奴が多かった。
しかし、アトラスはどうだ。3人を蔓で捕まえて人質にしてるし、フィオナを盾のように扱ってビルに攻撃をさせなかったり、卑怯ではあるが、考えて行動している。
それに前述したように、姿も違う。他多くは異形の怪物だったが、こいつは
何かが、おかしい。こいつはいったい、何なんだ?
「まぁ、いいや」
どっちであれ、こいつをどうにかしなければならないのは変わらない。
「ミア、君の力を借りたい。作戦があるんだ」
「うん、わかった」
3人は今、アトラスの頭上で蔓に絡めとられている。不用意に近づけば、絞め殺されかねない。
そこで、ミアに一番得意な魔法、時間停止魔法を使ってもらうことにした。
「いくよ、"タイム・ストップ"!」
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時が止まった。音はなにも聞こえなくなり、周りは色が反転して見える。そして、僕とミア以外の全てが完全に停止した。
勇者の剣を右手に、アトラスの方へと進む。そして、
―――ザン!ジャキ、キン!
アトラスから伸びる蔓を、切断した。それにより、アトラスは蔓を動かせなくなり、3人は解放される……はず。
「じゃあ、解くよ」
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時間が再び動き出した。その瞬間に、切断された蔓は重力に従って、3人の体と共に落下した。
危なっ!3人のHPが4割程にまで減っていた。
「なっ!」
「やったぞ!」
アトラスは驚きと怒りの目でこちらを睨んでくる。
「面白いなぁ。そんな力があるとは」
しかし、表情とは違って、その声はどこか楽しそうだ。
これもおかしい。他の手下たちは表情を見るどころか、感情すらなさそうだった。だが、こいつにはある。
「んじゃ、これはどうする?」
そう言うとアトラスは、大きく息を吸い込んだ。
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