第2話 秘密

 俺たちは、シュネムが死の間際に残した言葉、"ロスト"について話し合っていた。


 「おいおい、もしそれが本当なら、この世界そのものの危機ですよ!」


 世界の危機……ね。でも、俺は別に世界を救ったヒーローとかになりたいわけではない。ただ、アトラスの野郎に復讐をしたいだけだ。

 しかし、そのアトラスがロストって奴に関わっているなら、必然的に俺たちは必ずロストと関わることになる。


 「いったい……どうすれば……」


 いいや。俺はアトラスに復讐だけすれば。別に他の奴がどうなろうと………

 いや、ロストが世界規模の災害を起こすのなら、俺たちの世界も安全とは限らないな。


 「それなら、僕たちに任せてよ。」

 「ん?零、なにか考えがあるのか?」

 「なに?!それなら是非ともその考えを聞かせてはくれぬか?」

 「うん。」


 そして、零は一拍おいてから話し始めた。


 「僕は元々、もう1つの異世界に勇者として召喚された。その目的が、"魔王"を倒すこと。僕はその魔王がアトラスやシュネム、ロストと何かしら関係があると思う。」


 魔王……か。まだやばそうな奴がいるのかよ。敵というカテゴリーではアトラスにミア、"魔王"、それにロストか。


 「それで、その"魔王"と奴らにどんな関係があるんだ?」

 「楓にはまだ言っていなかったね。奴は僕と対峙した時、こう言った。『あらゆる世界、パラレルワールドを我が物にするのだ!』と」


 は?それはアトラスやシュネムが言っていた言葉。つまり、


 「つまり、"魔王"はアトラスらに関係する」

 「うん」


 しばしの沈黙の後、マルクスが声をあげた。


 「では、その件は君たちに任せても構わないだろうか。異世界は我々の管轄外だからな」


 あー、そうなるのね。まぁ、問題ないか。


 「それと、異世界関係の研究者を1人連れていかせても良いか?」

 「なるほど、実際に異世界に行くなんてこと、早々できませんからね」


 俺は零とこそこそっと話した。おそらく、零の言う通りなら魔王及びその手下たちはかなり強い奴だ。そこに戦闘に関して専門外の人がいてもいいのかと。


 「戦闘に関しては僅かにだが経験があるものだから、問題はない」

 「いや……奴らの力をなめないでください!!」


 騎士のその言葉に対して、俺の話を無視して声を荒げた。


 「奴らの力はその辺にいる強い奴とは比べ物にならない。僕たちでその人を守りきれるか分からない。ただ……僕たちの調査を邪魔しないなら構わない」

 「よし、では頼むぞ」


 調査の人とは後程打ち合わせるそうだ。俺たちとしてはすぐにでも零の世界に行きたいのだが、少し待たなければならなくなった。


 


 何時間か病院で休んでいると、騎士の人がある人を連れてきた。

 金髪、緑と黄色のオッドアイ、長い耳、幼い見た目……中学生か高校生かそれくらいの、女…の子。異世界系の物語ならエルフとか言われそうな人だった。


 「紹介しよう。彼女はスクーダス国の異世界研究者の1人で、今回の旅に同行させてほしい、」

 「ルナよ。種族はエルフ。よろしくね」

 

 あっ、本当にエルフなのね。


 「よろしく。俺は楓。そっちが零とアイリア」

 「よろしくね」

 「よろしく」


 ということで、俺たちはそのエルフ、ルナと別の異世界に行く事になった。


 ――――――――――


 この世界では、『異世界』というものの研究が進んでおり、その存在は既に証明されている。また、行く方法についてもある程度目星がつけられている。

 

 「そのためのゲートがこの先にあるのよ。」

 「ここって……」


 俺たちはルナに、世界を渡ることができると言われている場所へ案内されてきた。しかしそこは、俺たちも見知った場所だった。


 「ゲート遺跡。ここには異世界への扉、"ワールドポータル"がある、と研究によって分かったのよ。」

 「へー」


 ルナから話されたことはだいたい既に知っていることだった。と、言いたいところだが、それは心のなかに閉まっておく。


 それから、俺たちは遺跡を進んでいった。遺跡の中には、前の同じように罠などの仕掛けは一切無かった。曲がり道なんかもない、シンプルな作りの遺跡だ。

 数分後、遺跡の最深部へ到着した。そこには、以前と同様に石の枠があった。


 「たしか……これを起動できればいいはずよ。」


 このゲートの起動のしかた……って何だ?たしか、ミアが何かしらの操作をして起動していたけど、それがなにかは分からない。


 「なぁ、ミアがこれをどうやって起動したか覚えてるか?」

 「いや……」

 「わからない」


 そこで、ルナが振り向いた。


 「3人とも、ゲートの起動方法を?」

 「いや、知らないんだが、起動しているところを見たことがあってな」


 ミアはスキルのような何かを使っていた。それが何かが分かれば、起動のヒントとなるはずだ。


 「アイリア、零、ミアのスキルが何か分かるか?」

 「そうね……ミアちゃんと戦っている間、すごく変わった感じがしていたわ。なんか……何回も同じことをさせられているような……」

 「………」


 アイリアは答えてくれたけど、零は黙ったままだ。ミアは敵陣営で、零はこちらの陣営であるから隠すようなことではないはずだが。


 「零、何か知ってるのか?」

 「そういえば、最初にレイと出会ったとき、レイはミアのことを知っているような感じで話してたの。やっぱり何かあったんじゃない?」

 「………わかったよ。ミアについて話すよ」


 そして、零は話し始めた。それは、すさまじく驚くべきものだった。

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