第10話 敵(かたき)
「どうじゃ?これがその娘の過去じゃ」
「うぅぅ……頭痛が痛い」
「カエデ、ふざけないの」
気がつくと俺たちはもとの広場にいた。なんだろう、すごく悲しいものを見せられたみたいだ。そして、それは俺に協力してくれる仲間、アイリアの過去だった。
「お主ら、娘の過去を知ることで士気が落ちたのではないか?」
「んなわけあるかぁ!むしろ上がったよ!」
「ふぉ?」
シュネムは何を考えていたのだろうか。アイリアの過去を知って、なぜ士気が下がる?……俺と同じように、アイリアが復讐のことを話したら俺らは見限るとか思ってたのか?
「その事は知ってるし、最初からそれを目的に動いてんだ。だが、改めて聞かされて、いっそうお前を潰す気がしてきたよ!」
「えぇっと、僕も
「良いだろう。ここでくたばれ。」
瞬間、シュネムが消えた。煙となって上空へ移動し……破裂音と共に現れた!
上空に現れたシュネムは左腕を横に凪払って白色のエネルギーの固まり――光線を発射した。
「ぬわっ!」
間一髪で回避したが、着弾点は恐ろしいことに赤黒く焼け焦げていた。当たれば死、それを見るだけで実感できた。
シュネムはそのままゆっくりと下降して来た。着地と同時にアイリアは手に電撃を溜めながらシュネムの方へと突っ込んでいった!それをシュネムは軽く受け止める。さらに、テレポートで背後に回りアイリアの背中を蹴飛ばした。
「グホッ…!」
「ホッホッホッ、私を倒す?甘いわ。さて、アトラスの奴がこの辺りは掃除したから誰もいないが、騎士なんかが来ると面倒じゃからな。さっさと終わらせよう。」
そう言うと、シュネムは見覚えのある動きをし始めた。両腕を前にだし、左右に開く。そこからオレンジに光る剣が形成され始める。
――魔法剣を作り出した。
「こうじゃったかの」
~剣技【イグノア・ディフェンス】~
それって俺の―
剣を紫に輝かせ、俺やアイリアに向かって2人を切り裂く。アイリアは電撃を、俺は俺の魔法剣を作り出してさばく。
魔法剣自体は適正さえあれば大抵の人はできるため、それは何の不思議でもない。だが、俺の特殊能力を使えることは明らかにおかしかった。
「なんで、お前が俺の能力を使えるんだ?!」
「フォッフォッ、それが私のスキルだからだ。」
「なに?!」
シュネムのスキル、そういえば俺らはなだ知らない。
いったい何なんだ?俺の特殊能力をまんま再現しやがったぞ。
「アイリア、零、奴のスキルがなにか分かるか?」
「分からないわ。調べてはいたけど、そんなことはどこにも載ってなかった」
「……ありそうなのは、『他者のスキルを真似る』とか?」
「無駄話をしている暇ではないぞ!」
そう言ってシュネムは魔法剣から風の刃を飛ばしてくる。俺のでもアイリアのでもない、ってことは零のスキルか?
「僕の、ウインドカッター?」
どうやら、本当に零のスキルのようだ。
剣から飛ばされた無数の風の刃は、建物を刻んでいく。当然俺たちの方にも飛んできて、間一髪で回避をしていった。
「くそっ!どうすればいいんだ?!」
「カエデ、ひとつ、作戦があるんだけど。」
「アイリア?うん、聞かせてくれ。」
―――――――――――――――
「分かった。それで行こう。零!」
「オッケー!」
とて、俺はアイリアを離れてシュネムの方へと魔法剣を構えて走っていく。そして、シュネムの剣と鍔迫り合いになった。
「またせたな。」
「何をしたかと思えば結局正面から。それでは私には届かない」
「ああ、そうだろうな。なら、これならどうだ?!!」
俺は剣を横にはじいて、シュネムの体制を崩した。その隙に後方からの援護が入る。
「本物を見せてやろう!ウインドカッター!」
「本当に、厄介な小僧どもじゃ。ふん!」
零は剣を振って風の刃をシュネムへ向けて飛ばした。だが、その全ては俺からコピーしたと思われる魔法剣で防いでいく。
零の風の刃の攻撃が終わったら、今度は俺の番だ。なるべく俺たちに注意を引き付けて、アイリアの次の行動のための時間を稼がなければならない。それに最適なのは……
「てめぇの行動を全部封じてやる!」
~【アンチ・スキル・フィールド】~
俺の新たな特殊能力だ。さっき思いついた。技を叫ぶと、俺から輝く透明なドーム状の膜が広がった。
「……これが、どうしたというのだ?」
シュネムはまだ気づいていないようだ。よし、今のうちにたたみかけよう。
「てりゃぁ!」
俺が魔法剣を振り下ろすのを受け止めるようにシュネムは魔法剣を構えようとした。しかし、その手には何も握られていなかった。
「なぬ!」
防ぐ手段を失ったため、俺の剣はそのまま奴に斬撃を加えた。
この特殊能力は、範囲内の俺が認める相手以外の一切のスキル使用を封じるものだ。
今回は、零は範囲内で使用許可済み。アイリアは範囲外にいる。そしてシュネムのは封じた。
「面倒な…隠し玉を…持っておったな」
「まぁ、俺はお前を本気で潰すからな」
「ホッホッ、面白い能力だがこの程度、問題なかろう。」
シュネムは真上へ跳び上がって結界に本気の拳をいれた。すると、俺の結界はあっさりと壊れてしまう。
「チッ!…やはり即興の技では無理か…だが、ここからが本番だ!」
時間は十分に稼いだ。一気に決めるぞ!
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