第5話 企み
ゲート草原の魔物を狩り、なぜかすさまじく強かったリーフスネークを倒して、念願の遺跡に到着した。
建物にはいると、一本道が伸びていた。曲がる道もなく、他に部屋があるわけでもない、ただの一本道。
「よかった。これなら迷う心配もないな」
予想通り遺跡の道はこのまま途中で曲がることもなくまっすぐ続いており、迷わず最深部にたどり着いた。
そこで見つけたのは、石でできた5m×4mの長方形の物体だ。真ん中には同じく長方形の穴がある。
「これが異世界へのゲートか?」
「たぶんそう。ちょっと調べるね」
そう言ってミアは長方形の物体に手をかざして何かを調べ始めた。気のせいかもしれないが、だんだんと部屋とか通路に生い茂っていた苔やつるが消えていっている。
「よし、できた!」
ミアが数歩下がって、しばらくすると、ぼぉぉん!!と低い音を鳴らして、わくの中に緑色の光の幕のようなものが生成された。
「ミア!何したんだ?!」
「ゲートを復活させたの。もう一度使えるようにね」
「何のために?」
「私の目的を果たすために」
「は?」
俺がさらに問い詰めようとしたとき、ここからかなり離れているはずのミトロセリアの町の方から大きな爆発音らしき音が聞こえた。
「行ったらどう?ヒーローさん。あなたの憎い相手が待ってるよ」
微笑を浮かべ、先ほどまでの可愛らしい少女の雰囲気を完全になくしてミアがそう言った。
ミアにもっと聞きたいことはあったが、あの爆発音も気になるため大急ぎで町に戻ることにした。それにミアの言う、『憎い相手』も気になった。
行くときは八分の一日はかかった遺跡までの道だが、かなり急ぎ魔物も全て無視すると一時間とかからなかった。
ミトロセリアに到着したとき、俺は愕然とした。今朝はあった賑わいは消え失せ、ただ静寂のみがある町へと変わり果ててしまっていた。外に出て会話をするどころか、店に店員すらいなかった。
その上、建物のあちこちは破壊され崩れ落ちているところがあった。まるで誰かがスキルを使って暴れまわったかのようだった。
「どうなってんだ?なんで誰もいない?」
疑問に思い辺りを見渡していると、崩れかけている建物の屋根に人影を見つけた。
闇を連想させる紫の髪に憎悪に満ちた紅の目、血に染まったような黒みがかった真っ赤なスーツの人物。アトラスの姿がそこにはあった。
「おい!アトラス!」
アトラスに呼び掛けると、嫌な笑みを浮かべてこちらに反応した。
「久しぶりぃ~、楓君?」
「てめぇ、何をした?!」
「お前が俺から逃れたからだ。それでここの奴らは死んだ。他ならぬ、お前のせいでな!」
わけがわからない。確かに俺は神のおかげで死にこそしたものの助かったが、こいつがミトロセリアを襲う原因になるとは思えない。いや、アトラスの言う感じだと、それが襲う原因なのだろう。
人を見つけたら殺す。できなかったらそいつを追いかけて最終的には誰にも知られずにことを済ませる。それが奴らのやり方なのだとしたら、その存在を知った上、未だに存命の俺は処分しなければならない対象なのだろう。
アトラスの場合はミトロセリアを襲ったのは俺をあぶり出すためか。自身に対して復讐を企む相手なら、自分が出てくれば必ずそこに現れる、と思ってここを襲った。
「したら、案の定お前は出てきてくれた!いやぁ本当にバカだよなぁ。敵に『あなたの目標が待ってる』とか言われて普通来るかよ!」
えらい煽るなぁ、とか思いつつアトラスの話を聞く。といってもその内容はほとんど頭に入ってこなかった。
その後数分間アトラスの俺に対する煽り大会が続いた。満足したようで話を切り替えた。
「ま、いいや。俺の力を見てみろ!」
そして、アトラスは彼の後ろに隠していた男をその襟をつかんで前に出した。
「おら、こいつとな、爆弾を俺は今持ってんだ。そんで、これをこうしてーとー……」
アトラスは爆弾に魔力か何かを入れた。そして、それを男の背中に合わせて、詠唱を始める。
“意思を持たぬものよ。その人の体を以て、その身に意思を宿せ”
~融合【―――召喚】~
瞬間、周囲に閃光がほとばしった!目の前に太陽でもあるのかと思うくらいの光、目を瞑っても、耐えられないものだった。
光が弱まり、消えると、男はアトラスの手から消え、かわりに、水色の鎧のようなものを纏った人が、アトラスがいる建物の下に立っていた。
「成功だ!これぞ、俺がお前らのような逃れ者を始末するために作り上げた人工生命体、『
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