第4話 遺跡

 ゲート草原での狩りを終えて、ミトロセリアの町に戻った。魔物買取業者に戦利品を買い取ってもらい、結構な利益を得られた。

 今は今日からの宿を探しているところである。


 「あの宿とかどうかしら?」

 「よし、そこにするか」


 見つけた宿は町の中心部から少し北の方へずれたところにある。その建物は慣れ親しんだ和風のもので、大きさはなかなかだった。

 その宿にはこれから3日ほどお世話になることになる。


 翌日、さらに翌日とゲート草原で狩りを続けた。

 2日目は草原を少し奥に進むことにした。奥に行くに連れて、魔物はだんだんと強くなっていった。ストーンドッグの【岩飛ばし】の岩の数や固さが増したり、角ウサギの群れの数が増えたりと………。

 3日目にもっと奥の方へ進むと、完全に遭遇する魔物も変わった。

 リーフスネークは暗い緑のヘビで、かなり大きい。特殊能力持ちで、その内容は、体周辺の地面からツルを伸ばして攻撃するというものだ。ツルは細い糸のようにして使って触れたら切れるというものや、体に巻き付けて動きを封じるようにして使うこともあった。

 あと、ベニアドラの森にいた炎蜂にも出会った。あそこの森にいたやつ同様、炎の玉を使う特殊能力を持っていた。さらにベニアドラのよりも大きめだった。



 3日目の夜、宿を歩いていると、気になる人物を見かけた。特徴的な金髪と赤いリボン、ミアだった。


 「あれってミアだよな。2日前におつかいに来ていた子」

 「そうよね。おつかいに時間かかりすぎ……いや、おつかいに日まで跨ぐかしら」

 「少しへんだよな。話を聞いてみようか」


 ベルランスとミトロセリアはそこそこ離れていると言っても、となり町だ。おつかいに何日もかかるような距離ではないだろう。それにここは宿だ。

 まあとりあえずなんかおかしいかなと思ったので話を聞くことにした。


 「ミア、久しぶり」

 「ん?…あっ、久しぶり、お兄さん、お姉さん。どうしたの?」

 「ミアちゃん。あなたってたしか、おつかいに来ただけよね?なのになんで3日もここにいるの?」


 少し考えるようにしてからミアは言った。


 「うん、大丈夫。ちょっと出来てないだけ」

 「なにが?」


 ミアはなにかを言いたそうにしているが、言いづらそうだ。


 「実は私は冒険者なの。それで、ミトロセリアの遺跡を調べてこいってチームのみんなから言われて、それで……」


 ミアから聞いた話はこうだ。

 ミトロセリアのゲート草原には『ゲート遺跡』というものがあり、それは異世界へ繋がっている扉があるという噂がある。そこの調査をミアは任されたらしい。しかし、道中の魔物で調査に手間取ってしまい、明日が4日目になるとのことだ。


 「だったら、俺たちもついていこうか?そうすれば魔物に関しては俺らで対処できるからさ。」

 「うーん……。わかった。手伝ってくれる?」

 「おまかせを!」


 ということで、ゲート遺跡とやらを調査することになった。最終目標のアトラスは今この世界にはいないようだから別の世界へわたるのもありかもしれない。ならば、遺跡の調査というのも俺への得となるだろう。




 4日目は前日のようにゲート遺跡の調査に行くことにした。


 ゲート遺跡は草原のうち俺たちが行ったことのある場所よりもさらに奥へ行ったところにある。つまり、なかなかに強いリーフスネークやさらに強い別の魔物とも戦わなければならなくなる。しかも、ミアを守りながらだ。

 俺とアイリアの必要なものを整えてミアの部屋で合流してから、草原へ向かった。


 「よろしくお願いします。お兄さん、お姉さん」

 「「こちらこそ」」


 ゲート草原は最初の方は初心者向けと言われるようにそこまで魔物がずば抜けて強いというわけではない。そのため、ここはミアだけでもなんとかなる感じだった。


 きつくなってきたのは3日目に入った地点からだった。

 この辺りからリーフスネークや炎蜂と多く遭遇するようになった。そのため、ミアを守ることもなかなかに難しくなってきた。


 「アイリア!そっちにつるが!」

 「ええ!」


 今俺たちはリーフスネークと戦闘中だ。そいつの特殊能力である【つる】によって苦戦を強いられている。


 「はぁっ!」

 「やぁぁ!」


 俺は魔法剣で、アイリアは雷の魔法でリーフスネークのつるをきりまくっているのだが、次々につるを生やしてくるためにキリがない。しかもつるはかなり固く、一本斬るのにもかなりの労力がかかるため、俺もアイリアも結構体力が尽きかけている。


 「なんか……昨日より……」

 「……かなり……強いわね」


 昨日もリーフスネークとは戦ったのだが、今のやつはそれに比べて遥かに強いのだ。


 「アイリア、このまま慎重に戦っていたらきっと負けてしまう……!!だったら、アイリアの特殊能力があるんだったら一気に決めよう!」

 「…わかったわ。まかせて!」


 そう言って、アイリアは何か力を込め始めた。

 アイリアの方を見ると、パチパチと小さな雷のようなものと竜巻がその身を囲うのがわかった。


 「いくよっ!」


 ~混合技こんごうわざ風上雷撃ふうじょうらいげき】~


 アイリアが叫ぶと、アイリアの前に巨大な竜巻が現れリーフスネークを遥か上空へ打ち上げた!

 さらに打ち上げたリーフスネークに雷が何発も襲いかかる!


 「ーーーーー!!」


 アイリアの特殊能力をもろに食らい、リーフスネークは落下とともにその衝撃で力尽きた。


 「はぁ……はぁ……なんとか倒せたな」

 「でも……強すぎない?」


 先述した通り、昨日もリーフスネークと遭遇し、戦った。しかし、今日遭遇したものは昨日のより伸ばしてくるつるの数も強度も、そして本体も遥かに強かった。


 「何かがおかしいわ。ここの魔物がこんなに強いはずがない」


 俺とアイリアが考え込んでいると、ミアが声をあげた。


 「お兄さん!お姉さん!あれ見て!」


 ミアはそういいながら、草原の奥の方を指差している。その視線の先には、建物があった。

 かなり苔むしている石造りの建物だ。草原のど真ん中なのだが、その建物の周辺だけ建物を守るように密林になっている。


 「もしかして……あれが?」

 「うん。間違いないと思う。あれが私が調査を頼まれた遺跡だと思う。」

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